なぜ『ひよっこ』で増田明美?朝ドラ仰天キャスティングの秘密

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「おはようございます。増田明美です」
 こんなナレーションで放送が始まったNHK連続テレビ小説『ひよっこ』。マラソン元日本代表の増田明美さん(53)が抜擢された「サプライズ」が話題になった。起用の理由をチーフプロデューサーの菓子浩氏はこう語る。

増田明美さんのマラソン解説のファンです。聞き取りやすくきれいな声。選手の気持ちが伝わる説明。どこで仕入れた? と思ってしまうマニアックな情報。『ひよっこ』の語りは、“語り”というよりは“解説”ですから」

 さらに増田さんは体育教師役で劇中にも登場。じつは朝ドラには異色キャストが過去にも多くいる。

「演技経験もない僕に声がかかるなんて、こんなチャンスはないと思った」

 そう語るのは『さくら』に出演した元サッカー選手のラモス瑠偉氏(60)だ。

「ものすごく練習しましたよ。朝ドラに出て驚いたのはその影響力。サッカーファン以外の方も『観てるよ、頑張ってね』と声をかけてくれて嬉しかった」

『まんてん』に出演した空手家の角田信朗氏(56)も当時、ドラマ出演は2度めと経験が浅かった。

「前年に出演した大河ドラマ『北条時宗』を訓覇(くるべ)圭プロデューサー(女優・石田ひかりの夫)がご覧になっていて抜擢してもらいました。『涙もろくて人情味溢れる黒田のキャラクターなら素で演じられると思う』と……」

 NHKの別番組がきっかけとなったのは『つばさ』に出演したミュージシャンのROLLY氏(53)も同じだ。

「NHKの特番に出演した際、プロデューサーと意気投合。『いつか一緒に何かを作りましょう』と話した5年後に朝ドラ出演のオファーが来ました。光栄の極みでワナワナ震えましたよ」

 前出のラモス氏も1998年のフランスW杯でNHKの解説者を務めた実績がある。サプライズ人事には出演実績とスタッフとのコネが不可欠だ。

「増田さんはマラソンの解説はもちろん、1994年に昼の情報番組でキャスターを務めるなど、NHKとのかかわりは深いんです。再放送が多く、DVD化もある朝ドラはほかの番組以上にキャスティングに気を遣う。『サプライズ』といっても、人となりがわかる人しかオファーは出せません」(NHK局員)

 もうひとつのサプライズが主人公・谷田部みね子を演じる有村架純(24)のキャスティングだ。脚本の岡田惠和氏の熱望でヒロインに選ばれた。オーディションなしでの主役抜擢は『花子とアン』の吉高由里子以来6作ぶりだ。

 有村は『あまちゃん』(2013年)のオーディションでヒロインを逃した苦い過去がある。有村は主人公の母の若き日を演じることとなった。有村が落ちたオーディションはどのようなものか。『まんてん』でヒロイン・満天役を演じた宮地真緒(33)はこう振り返る。

「ドラマの内容を知らされていないので、用意も何もできません。審査で印象に残っているのはスタジオを何周か走ったこと。走るシーンが多く、表情を撮りたい意図があったようです」

『和っこの金メダル』でヒロイン・秋津和子を演じた渡辺梓(48)はこう語る。

「1〜2次審査、カメラテストを経て決まりました。1カ月の長い選考でした。私は最終審査までいきましたが落選。主人公の友人役となりました。しかし、ヒロイン役に決まっていた人が降板したため、主役に繰り上がりました」

 渡辺は732名の応募者から選ばれた。前作『べっぴんさん』の応募者数は2261名にまで膨れ上がっている。ヒロインを演じた芳根京子(20)は4度めの朝ドラオーディション挑戦だった。今回の有村の抜擢は本人にとってもサプライズだったにちがいない。

「『あまちゃん』出演時の取材では聞こえないくらいの小声で話していた有村さんですが、『ひよっこ』が決まって再び会ったら声も大きくなり、冗談も言えるくらいに明るくなっていました。この4年間の成長が見て取れました」(テレビ誌記者)

 挫折にめげず精進したからこそ、サプライズがあるのだ。

(週刊FLASH 2017年4月25日号)