AFX通信によると、米半導体大手AMD（アドバンスト・マイクロ・デバイシズ）は、不採算部門であるメモリーチップ事業を新会社「スパンション」としてスピン・オフ（企業の分離・独立）し、新規上場を計画しているが、分離・独立後も、同部門には大きな逆風が待っている。

　　AMDのメモリ部門は、第1四半期に1億4000万ドル（約150億円）の最終損失を計上した。携帯電話などに組み込まれるフラッシュ・メモリー・チップの売上高は、前年同期の6億2800万ドル（約680億円）から29％減の4億4700万ドル（約485億円）に落ち込んだ。対照的に、インテルの第1四半期のフラッシュ・メモリー売上高は前年同期比39％増の5億7800万ドル（約630億円）だった。収益の43％をチップ事業に依存するAMDは、7％にすぎないインテルによるアジア地域での値下げ攻勢に収益が圧迫された形だ。また、調査会社アイサプリによると、全世界的のメモリー・チップの売上高は、2005年は前年比15％減が見込まれるなど、減少傾向に入るとしている。

　　このため、インテルとの競合に勝算が見いだせない場合は、「できるだけ多くの追い風を得るために、今年後半まで分離を遅らせるだろう」（アメリカン・テクノロジー・リサーチのアルバート・リン氏）との見方もあり、スパンションの分離を第3四半期までずれ込ませることもありうると見られている。

　　投資銀行のシティグループとクレディスイス・ファーストボストンにとっても、AMDと富士通が6:4で共同出資するスパンションのIPO（新規株式公開）は厳しいものがあるかも知れない。特に、市場は例年の夏枯れ取引を迎える。ただ、カギを握るのはやはり、メモリー需要で、同社は昨年延期を決めたフラッシュ・メモリーの新製品を今年第1四半期に出荷を始めているうえ、携帯電話大手ノキアもより高性能な携帯電話で高速なメモリチップの供給が必要とのアナリストの指摘もあり、需要次第では、同社の自律的な経営が支援される公算もある。

　　一方、7億7800万ドル（約845億円）の負債を抱えるスパンションは、上場すればAMDや富士通に頼らず、自力で資金調達をしなくてはならない。同社は今月13日に当局に対して、IPO関連の最新の書類を提出したが、新規株式公開と同時に社債の発行も計画しているようだ。ただ、どれだけの資金が調達できるかは不透明で、7月中旬に発表されるAMDの第2四半期決算でのスパンションに関する見通しが注目されている。　【了】