【戸塚啓コラム】言い訳のできないサウジ戦。並行して求められる“プランB”

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 プランBを用意しておく必要があるのでは、と考えている。日本代表の監督について、だ。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表は、ロシアW杯アジア最終予選のグループBで3位につけている。首位のサウジアラビアとは勝点3差で、2位のオーストラリアとは1差である。W杯へストレートインできる2位以内は遠くないが、4位のUAEとの勝点差もわずかに1だ。プレーオフにW杯出場の望みをつなぐ3位のポジションも、決して安泰ではない。

 11月15日のサウジ戦は、ハリルホジッチ監督の去就を決定づける一戦となる。エクスキューズの入り込む余地が、この試合にはないからだ。

 9月、10月の連戦は、最初にホームで戦い、次にアウェイへ乗り込むスケジュールだった。ホームゲームでも疲労に悩まされる選手がいて、アウェイゲームでは気候の違いや時差の克服が問われた。

 11月は違う。11日にオマーンとテストマッチを消化し、その4日後にサウジ戦を迎える。これまで海外組を悩ませてきた長距離移動による疲労も、ヨーロッパとの時差も、絶対的な練習量の不足も、今回はすべて無関係だ。所属クラブで出場機会に恵まれていない選手も、オマーン戦を助走としてサウジ戦に臨める。

 ハリルホジッチ監督からすれば、言い訳のできないゲームである。勝利は必須だ。
勝点3を逃すようなことがあれば、“ハリルホジッチ監督後”を考えなければならない。来年3月の最終予選再開へ向けて、後任人事に着手するべきだ。

 指揮権のスムーズな移行は、手倉森誠コーチの昇格だろう。10月から再び代表チームのスタッフに加わったこのリオ五輪代表監督は、チームの課題から選手の人間性までを把握できている。すぐに立て直しへ着手できるだろう。

 内部昇格がマストではない。Jリーグで采配を揮っている監督なら、外国人でも予備知識を生かしたチーム作りができる。代表チームがつねに直面する時間の無さを解消するには、日本サッカーの特徴や日本人のメンタリティを理解していることが大前提だ。

 アルベルト・ザッケローニからハビエル・アギーレ、ハリルホジッチへと続く外国人監督の招へいは、「監督としての国際経験」を重視したものである。世界のトレンドを取り込むことも一因にあげられるが、選考基準の最上位には「世界の舞台で戦えるか否か」があったはずだ。

 世界で戦うには、まずアジアで勝ち抜かなければならない。ところが、アジアの常識をなかなか受け入れられない外国人監督は少なくない。

 ハリルホジッチ監督がしばしば表情を歪める海外組の移動距離の長さも、それに伴う疲労も、アウェイへの長距離移動も、アジアでは当然のものとして受け入れなければならない。国際的な経験を持った審判も、欧州や南米に比べれば率直に少ないだろう。それでも結果を残すマネジメントが、代表監督には求められるのだ。

 外国人監督がストレスを覚えるアジアの常識を、日本人監督ならあらかじめ織り込みずみで対応できる。ストレスのバロメーターははっきりと異なるし、それによって事前の準備も変わってくる。個人的に日本人指導者を推したい理由だ。

 いずれにしても、サウジ戦の結果次第で日本サッカー協会技術委員会は決断を迫られる。ハリルホジッチ監督を最大限サポートしつつ、プランBの作成を進める両睨みのスタンスで、11月15日を迎える必要があるはずだ。