試合後、サポーターのブーイングに対して首を傾げた柏木。「今こそ『次行こうぜ』と言ってほしかった」と言う。(C)SOCCER DIGEST

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[J1・第2ステージ4節] 浦和レッズ 2-2 大宮アルディージャ
7月17日/埼玉スタジアム2002
 
 
 浦和対大宮のさいたまダービーは、両チームが攻め合う白熱の展開になった。後半途中からは選手たちも「オープンな展開になった」と言っていたが、それでも緊張感の途切れることのない90分間だった。

 結果は2-2のドロー。試合直後、相次いで選手たちがピッチに倒れ込み天を仰いだ。

 とはいえ、さいたまダービーは、サポーターにとっても「特別な一戦」。すると試合後、浦和サポーターで埋め尽くされたゴール裏に選手たちが挨拶に行くと、相反するふたつの反応があった。

 大半のサポーターが拍手を送るなか、一部からブーイングが起きたのだ。最前列で「34分の1」に「×」(34試合の中の1試合ではない)という横断幕を掲げたサポーターの姿は、スタジアム内の大型ビジョンにも映し出された。
 
 ただそのブーイングに対し、浦和の柏木陽介はサポーターに訴えかけるように手を広げて首を傾げ、「なぜ」とアピールした。その後も柏木は観客の反応を感じ取るように、スタジアムに目を配っていた。

 試合後、柏木はその想いについて語った。
 
「正直、勝たなければいけない試合だった。(勝てたとも言えたか、負けずに済んだか?)そういうことではなく、絶対に勝たなければダメだった」
 
 まず、柏木はこの一戦に懸けていた想いをそのように話した。

 そのうえで、「ただ、負けてはいない。だからハーフタイムと試合後のブーイングには、納得がいかない。それに5連勝のあとの引き分け。そういう時こそ、温かく『次行こうぜ』と言ってくれるのが、チームではないかと思う。3連敗のあとだったら、受け止めている」と、ブーイングに対し疑問を投げ掛けた。
 
「一緒に戦ってほしい。今日は浦和の全員が戦っていたし、一生懸命汗を流したうえでの結果だった。前向きになれる試合だったのではないだろうか。別に俺が叩かれてもいい。浦和はビッグクラブだけど、皆さんの選手へのリスペクトがもう少しだけあってもいいのかなと思う」
 
 柏木が強調したかったのは、「ひとつになって戦う」こと。さいたまダービーの特別な雰囲気を作り上げてくれたからこそ、ここで今一度「ひとつ」になるのが大切ではないかと訴えかけていた。
 
 もちろん「順位的にも大宮は下にいる。その意味でも勝たなければいけない相手だったと言えた」(宇賀神友弥)と受け止める声もあった。

 果たして応援するチームに対するブーイングは本当に大切なのか? どういったタイミングでするのが、より意味や効果があるのか。そういった問題について、柏木の発言が、今一度考える機会を与えたのは確かだ。

 一方、試合内容について、柏木はいくつも反省点を挙げていた。
 
 まず攻撃面で、前半から全体的に気持ちが前のめりになっている印象を受けたという。
 
「全員が前に行こうとしていた。だから、誰か一旦止まって、一回当てて展開しようと伝えた」
 
 そのなかで、訪れた直接FKのチャンス。「ここは俺の位置。誰にも譲る気はなかったし、集中していた。ノブ(大宮のGK加藤順大)は俺の癖を知っているから、一瞬迷ったけど、最初に思ったとおりに狙った」と、美しい放物線を描いてゴールネットに叩き込んだ。 

 また前半終了間際には、柏木と槙野智章が激論を交わす事態が起きたという。
 
「少し間延びする時間帯が続いていたので、もっと前に押し上げてコンパクトにすべきでは、と提案した。マークが曖昧にもなり、そのあたりで言い合いになった」
 
 また後半途中からはシャドーにポジションを移した。ペトロヴィッチ監督からも「途中からシャドーで行くかもしれないぞ」と言われていたという。
 
「早い時間からポジションチェンジすることは想定していた。そこから、良い駆け引きはできていた。ニアに入ってヘッドで(決定的なシュートを)叩き込めた(大宮のGK加藤順大にキャッチされる。でも、ゴールの枠に入れようと意識しすぎた」
 
 そうした反省点を踏まえたうえで、次の5節、7月23日には年間勝点で3差(浦和は通算勝点43、鹿島は同46)の2位・鹿島との大一番をアウェーで迎える。
 
「やるべきことは変わらない。オープンな展開になるかもしれない。ただ勝点を積み上げていくことが大切。結果にこだわって気負いすぎず戦いたい」
 
 ここからリオ五輪出場のため、興梠慎三と遠藤航が抜ける。第1ステージ覇者との一戦は、浦和にとって行方を大きく左右するターニングポイントになるかもしれない。
 

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
 
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