また日本においても、国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科・能登洋医長の研究によって「糖質制限食を5年以上続けると死亡率が高まる」と報告されている。
 それによると、30歳以上の約27万人を対象に5〜27年間追跡した調査を分析したところ、糖質を1日の総摂取エネルギーの30〜40%にした低糖質グループは、60〜70%にした高糖質グループに比べて死亡率が31%アップすることが判明している。

 アメリカ国立衛生研究所が行った1万人を対象にした研究によれば、厳格な糖質コントロールを行って血糖値を下げたグループは、標準レベルの血糖コントロールを行ったグループに比べ21%も死亡率が高かったという。
 東京都多摩総合医療センター総合内科(循環器科)の外来担当医が言う。
 「人間が穀物や野菜中心の食生活に合っているのは、アメリカの食生活の歴史で明らかにされています。こんな話があります。18世紀までは穀類中心の食生活だったのが、19世紀に経済が発展し都市部に人が集中するようになり、肉、卵、牛乳などをよく食べるようになってから、心筋梗塞によって亡くなる人が増えた。1975年、米上院に栄養改善委員会が設けられ、全世界の食生活を調査した結果、500ページに及ぶ勧告文を2年後に発表。それを読んだマクガバン上院議員は『我々はバカだった。造病食を食べていた』と涙したという話は、今でも伝えられています」

 この勧告文では、1日のエネルギー摂取の55〜60%を炭水化物で摂取、脂肪摂取量を30%にまで減らす、砂糖の消費量を40%減らす、塩分摂取量を1日当たり3グラムにまで減らすなどの目標を掲げ、果物、野菜、鶏肉、魚、脱脂粉乳、植物性油脂の消費を増やし、牛乳、肉、卵、乳脂肪、塩分、脂肪、白糖を含む食物の消費を減らすことで目標が達成されるとした。
 「この勧告文は、糖質制限とは全く反対の食事を勧めています。そこからアメリカなどでは、日本食ブームが起きる。そして35年後、アメリカでは心筋梗塞やがんの死亡率が大幅に減少したのです。私たちは、太り過ぎの解消などのために、一時的に糖質制限を行うことをしてはいない。アメリカでの出来事は、そういう食生活を続けることの危険性を指摘しているのです」(専門医)

 現在の日本では、健康診断で異常がない人は7%しかいないと言われる。その異状のほとんどは食べ過ぎが原因ということが分かってきた。最近では、糖質制限食をとり入れようと食品業界も動き出し、低糖質ラーメン、ピザなどの開発を進めている。ラーメン1杯の糖質を、通常の80グラムから30グラムほどに抑えるという。そんな風潮の中であっても、バランスのとれた糖質摂取を心掛けたいものだ。