200万円台で狙える注目の輸入車5台を比較試乗!
インポーターによる合同試乗会において、200万円台で買える輸入車をモータージャーナリストの鈴木ケンイチ氏が乗り比べしてみた。それぞれにどんな個性があるのか? お買い得なのは? もっとも楽しいクルマは?
Bセグメントを中心に200万円台の輸入車5台をピックアップ
2015年2月上旬、毎年恒例のJAIA輸入車試乗会が開催された。JAIAとは日本自動車輸入組合のことで、簡単にいえば輸入車のインポーターの集い。そこが毎年、2月に合同でメディア向けの試乗会を開催するのだ。メルデスベンツからBMWといったドイツ勢だけでなく、プジョー/シトロエンなどのフランス車、またフィアット&アルファロメオなどのイタリア車、それ以外にもジャガー/ランドローバー、マクラーレン、ロータス、ボルボ、GM、テスラなどが参加。用意された車種は90台ほどにもなる。また、取材する側も500人を超えるという、自動車メディア界にとっても大きなイベントだ。
とはいえ、1日に一人で何十台も乗れるわけもない。そこで、今回は購入しやすい、300万円以下の「200万円台で買えるクルマ」をテーマにしてみた。セレクトしたのは以下の5台だ。
「フィアット 500C ツインエアラウンジ」(279万7200円)全長3570×全幅1625×全高1505mm、車両重量1050kg、875cc直列2気筒インタークーラー付きターボエンジン、5AT、最高出力63kW(85馬力)/最大トルク145Nm、JC08モード燃費:24.0km/l
「ミニONE 5ドア」(255万円)全長4000×全幅1725×全高1445mm、車両重量1260kg、1198cc直列3気筒DOHCツインパワーターボエンジン、6AT、最高出力75 kW(102馬力)/最大トルク180Nm、JC08モード燃費:19.2km/l
「プジョー 208 Allure(アリュール) シエロパッケージ」(256万円)全長3975×全幅1740×全高1470mm、車両重量1180kg、1199ccDOHC直列3気筒ターボチャージャーエンジン、6AT、最高出力81kW(110馬力)/最大トルク205Nm、JC08モード燃費:18.2km/l
「シトロエン C4 Seduction(セダクション) アップグレードパッケージ」(274万円)全長4330×全幅1790×全高1490mm、車両重量1330kg、1199ccDOHC直列3気筒ターボチャージャーエンジン、6AT、最高出力96kW(130馬力)/最大トルク230Nm、JC08モード燃費:16.3km/l
「フォルクスワーゲン ポロ ブルーモーション」(269万9000円)全長3995×全幅1685×全高1470mm、車両重量1100kg、999cc直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボ(4バルブ)エンジン、7DSG、最高出力70kW(95馬力)/最大トルク160Nm、JC08モード燃費:23.4km/l
クラスで言えばミニとプジョー208、フォルクスワーゲン ポロの3台がBセグメントに属する5ドアハッチバックで、ガチンコのライバル関係だ。3ドアのフィアット500Cはひとつ下になるが、ルーフが開くというプラスアルファで、この価格帯になっている。逆にシトロエンC4は、ひとつクラスが上だが、バーゲンプライスで勝負といったところだろう。
キャンバスルーフ、レトロデザイン、2気筒エンジンの組み合わせが別世界へいざなう!
「フィアット 500C ツインエアラウンジ」
まずは、欧州車でもとびきりの華やかさを持つ、500Cからいってみよう! 500Cはベースとなる500(チンクエチェント)をキャンバスルーフにして、電動で開閉できるようにしたもの。ルーフを開けてもサイドはピラーごと残るため、走行中にオープンにしても風の巻き込みは最小限というのが特徴だ。
500のデビューは2007年。相当に月日が過ぎているけれど、その個性豊かなデザインには古くささはない。今年の1月にマイナーチェンジを実施しており、LEDのデイライトを採用。オーディオの5インチのモニターはタッチスクリーンにアップデイトされている。こうしたユニークなキャラクターのモデルは、長年乗り続けていても古くさくならないのもうれしいポイントだ。
パワートレインは875ccの2気筒ターボエンジンにロボタイズドMT(AMTとも呼ぶ)のデュアロジックで、日本車にはない組みあわせだ。2気筒らしいボロボロボロという、賑やかな音と振動と共に加速する。小排気量とはいえパワー感は十分。基本がMTということで、アクセル操作に対するレスポンスはダイレクトだ。ただし、シングルクラッチを機械が自動操作するAMTは、加速のシフトアップ時に一瞬の減速感が生じる。ここをどう感じるかによってAMTの好き嫌いが別れる。非常に個性の強いトランスミッションである。また、ショートホイールベースならではのキビキビとした軽快な走りも500の魅力。開け放ったルーフから空と風を感じての500Cの走りは爽快そのもの。
最高にオシャレなデザインと、愉快そのものの走りを味わいたい人にとっては、これ以上なくハートに刺さること間違いなしの1台だ。
おなじみのデザインだが、その個性のためにいまだに路上で異彩を放つ存在感は衰えてない
キャンバストップは、リアウィンドウあたりまで後退する。フルオープン時には爽快感がありつつ居住性も良好
外装色とあわせたダッシュボードのパネルなど、レトロなテイスト。中央の液晶ディスプレイはオーディオをタッチ操作で行える
コンパクトなボディ相応の広さのインテリアだが、チェック柄のシートなど華やかさが持ち味だ
ベーシックグレードでも、魅力あふれるミニのレトロモダンな世界観を楽しめる!
「ミニONE 5ドア」
続いてはミニONE 5ドア。2014年にミニシリーズに加わった5ドアモデル。そのベーシックグレードがONEだ。試乗車はオプションのナビゲーションパッケージ(22万3000円)を装備。衝突軽減自動ブレーキ/ACCもオプションで用意されているが、試乗車には装着されていなかった。
5ドアモデルでも、世界観はミニそのもの。ブラックを基調に、シルバーのスイッチ類を配する、レトロモダンなインテリアは魅力的だ。ベーシックグレードだからといって、卑下する必要はまったくないだろう。
エンジンを始動させれば、3気筒エンジンならではのやや大きめの振動とガサガサしたエンジンサウンドが耳に届く。ちなみに、上位グレードとONEの違いは主にエンジンになる。クーパーが1.5リッターの3気筒ターボ(136馬力/230Nm)で、最上級のクーパーSが2リッターの4気筒ターボ(192馬力/280Nm)。それに対して、ONEは1.2リッターの3気筒ターボで102馬力/180Nmとなる。ただし、振動と音は、同じ3気筒のクーパーも似たり寄ったりという記憶がある。
また、パワーという点でもONEはシリーズ中で最も小さい。しかし、Bセグメントで100馬力に何の不足があろうものか。街中から自動車専用道路まで活き活きと走る。“ミニの走りはゴーカートフィール”と昔から言われるように、ステアリング操作に対する反応は機敏だ。しかし、BMW製となった初代のニューミニよりもいくぶん反応はゆったり。落ち着きと乗り心地という点ではよい方向にきたと思う。やりすぎではない、節度ある快活さになっていたのだ。よほどの飛ばし屋でないかぎり、機敏さに関して不満を抱くことはないだろう。
そして5ドアモデルとしての最大の特徴がリアドアと後席。しかし、これにはあまり大きな期待はしないほうがいいだろう。3ドアに対してホイールベースを7cm延長して、後席レッグルームも約4cm拡大しているが、あくまでも“ミニとしては広くなった”という話。もともと5ドアとして設計されたライバルBセグカーほどではない。“ミニの世界が好きだけど、3ドアは敬遠する”というニーズには応えるが、いつも大人が後席を利用するという人にはおすすめしにくい。後席はたまにしか使わない。もしくは、後席は子どもが使うという人にすすめたい。しゃれたデザインに快活な走りはミニそのもの。ベーシックグレードでもまったく不満はないはずだ。
3ドアのミニに対して、ホイールベースを7cm延長して5ドアハッチバックに仕立て直したミニONE 5ドア
今回試乗したベーシックモデルのONEは、1.2リッターの3気筒ターボを備え、102馬力/180Nmを発生する。パワーは十分
前席はスポーツカーのシートようにサイドの張り出しが大きい。サポート性はすこぶる良好
小さめなドアからも察せられるように、後席はさほど広くはない
同じクラシカルでも、フィアット500がライトウェイトスポーツ風なら、ミニはどこかに重厚さを感じさせる
未来的な内外デザインと、高い実用性&伝統の“猫足”を併せ持つ
「プジョー 208Allure(アリュール) シエロパッケージ」
お次はプジョー208。2012年にデビューし、昨年10月にフロントフェイスとパワートレインを新しくしたモデルだ。アリュール シエロパッケージは208シリーズの中では、ミドルグレード。パノラミックガラスルーフを装備するのが特徴だ。208はベーシックをスタイル、ミドルがアリュール、上級がGTライン、その上にスポーティグレードのGTiを掲げるというグレード編成となる。エンジンは110馬力の1.2リッターターボを基本として、GTiに208馬力の1.6リッターターボを搭載する。先進運転支援システムとしては、時速5〜30kmで作動する衝突被害軽減自動ブレーキを装備(ベーシックなスタイルのMTモデル以外に標準装備)。カーナビはオプションだ。
レトロモダンのミニから208に乗り換えると、あまりの世界観の違いにクラクラする。ステアリングは小径。メーターは、その奥ではなく、その上。非常に珍しい配置だ。センターのモニターは、まるでインパネから生えているかのよう。インパネはシボではなく、編み目のような柄。ブラックを基調にシルバー加飾はミニも同じだけれど、208は相当にモダンだ。パノラミックガラスルーフのおかげもあり、明るく、見晴らしのよさも特徴だろう。また、もともと5ドアを基本とするから後席も使いやすい。いわゆるパッケージングにすぐれているわけだ。
エンジンは3気筒だが、振動とノイズの押さえ込みがうまくいっており不快感はない。6速ATを駆使する加速感はスムーズそのもの。また、路面の凹凸をうまくいなしており、乗り心地も悪くない。もともとプジョーは“猫足”と呼ばれる、しなやかな乗り味が伝統。少し前のモデルは、硬めのドイツ風を志向していたようだが、最近はしなやか方向に戻ってきた。うれしい変化だ。
先鋭的なデザインを採用しながらも、走り自体はオーソドックスで居住性もよいのが208。個性的なデザインを楽しみつつも、実用面で困ることはない。初めて輸入車に挑戦したいという人に適している。
2015年10月にフロントデザインとエンジンを一新した新しい208。試乗モデルはパノラミックガラスルーフを備えたミドルレンジモデル
新しいエンジンは、110馬力の3気筒1.2リッターターボ、110馬力/205Nmを発生。燃費は18.2km/l(JC08モード)
小径のステアリングの上から見えるメーターと、突き出るような中央のディスプレイなど、未来的な雰囲気のインテリアだ
先進的なデザインを採用しつつも、リアシートはなかなか広く居住性も良好。実用性がおろそかになっていない点も美点だ
ラゲッジスペースは285Lで、このクラスとしては奥行きもありなかなか使い勝手がよさそうだ。分割可倒式シートを折りたためば1,076Lの収納容量がある
コスパと実用性が魅力、アイシン製ATで信頼性も向上
「シトロエン C4 Seduction(セダクション) アップグレードパッケージ」
シトロエンC4は、今回の試乗車の中では唯一のCセグメント車。ライバルはフォルクスワーゲンのゴルフという、格上のモデルだ。そのため、乗り込んでみれば、室内の広々感は明らかに他のクルマよりも1枚上。後席もゆったりとしているし、トランクルームも段違いの広さ。実用性という意味では、この日の一番だろう。黒をベースにシルバー加飾を配したインテリアは、シックではあるけれど、ちょっと普通というか大人しいという印象だ。
ただし、1.2リッターターボと6速ATの組みあわせのパワートレインは、ほかと大差ない。逆に大柄なボディのせいで、燃費も加速性能も、ほかよりもちょっと見劣りする。とはいえ、あくまでも比較した上での話で、単独走行で「遅いな」と思うことはなかった。必要十分なパワー感がある。また日本のアイシン製の6速ATの変速は、落ち着いたセダンらしい滑らかなものであった。
フランス車らしい、高い実用性とすぐれたコストパフォーマンスを備えたC4。欧州ハッチバックとして、非常に手堅くオーソドックスなクルマであった。
今回紹介した5車種で唯一、Cセグメントに属するシトロエンC4。車格としてはコストパフォーマンスはきわめて高い
1.2リッター ターボとアイシン製の6速ATの組み合わせ。かつてのフランス車はATが鬼門だったが、アイシン製なら信頼性も期待できる
シトロエンといえば超モダンなデザインが持ち味だが、C4は少々おとなしめ
クラスがひとつ上なだけあり、リアシートのゆったり感はなかなか。乗り心地もフラットで柔らかく、ドイツ勢とはひと味違う
ラゲッジスペースも今回比較した5車種の中では一番広い
ドイツ車らしい安定感と重厚さが息づく、走りも装備も燃費もすぐれた驚きの1台
「フォルクスワーゲン ポロ ブルーモーション」
本来、Bセグの欧州ハッチバックのエンジンの適正サイズといえば、1.5リッタークラス。それに対してターボをつけて1.2リッターにダウンサイジングしたのが今どきの欧州の主流。このブルーモーションは、1リッターにまでダウンサイジングを進めた意欲作。燃費は、ポロ史上最高の23.4km/lを達成している。しかし、300台限定での日本発売が2015年9月下旬。フォルクスワーゲンの排気ガス不正発覚の直後という最悪のタイミングとなった不運のモデルでもある。
しかし、内容を見ると、なかなかのもの。空力性能を高める専用前後バンパーとサイドスカート、15インチアルミホイールだけでなく、全速度域で作動する衝突被害軽減自動ブレーキとACCまで標準装備とした。ステアリングはレザーで、パドルシフトまである。リアビューカメラも装備されている。装備面の充実度は高い。
小排気量ということで、加速ではエンジンが元気よく高回転まで回るが、加速力自体に不満はない。1リッターでも十分に走る。しかも、その走りはズシッと重厚で安定感がある。いかにも! というドイツ車風であり、ゴルフに通じるフォルクスワーゲンの乗り味が楽しめる。CセグやDセグからの乗り換えユーザーでも満足できるだろう。
走りがよいだけでなく、インテリアのしつらえの品質感も高い。もちろん5ドア車としてのパッケージングにもすぐれ、実用性も十分だ。装備が良くて、燃費性能も1ランク上。欠点が見当たらない。あえてネガティブポイントを挙げれば、「デザインが地味」なこと。華やかさを求める人にとっては、ポロは普通すぎるではないだろうか。
しかし、恐ろしいことにフォルクスワーゲン ジャパンは1月26日に、1.2リッター モデルにカーナビまで標準装備としたお買い得グレード「ポロ プレミアムエディション ナビ パッケージ」を1300台限定239万9000円で投入した。排気ガス不正による販売不振を払拭するためのカンフル剤だろう。不正問題でブランドイメージに傷はついたけれど、製品としての出来が、それで急に悪くなるわけもない。Bセグメントの欧州ハッチバックでのベストバイは? と聞かれれば、「今ならばポロ」と答えたいと思う。
後述する1リッターエンジンにエアロパーツ、ACCやパドルシフトなど充実した装備が魅力
1リッターまでダウンサイジングされた3気筒ターボエンジンは、23.4km/lの燃費を記録しながら、かったるさはなく、きびきびとした走り
圧倒的なホールド性があるわけではないが、適度なハリのあるシート
華やかさには欠けるが重厚感がありBセグメントのハッチバックとは思えない室内の雰囲気。よい物に囲まれる安心感がある
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