多くの神社は財政難に苦しんでいる

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 全国で一番、神社に対する信仰心の厚い都道府県は果たしてどこでしょうか?

 先日、京都の下鴨神社が式年遷宮における資金難のため、境内に高級分譲マンションを建設するという話がありましたが、現在の神社界における懐事情はあまり良いとは言えません。

 もちろん近年、パワースポットや御朱印ガールという言葉に象徴されるように、神社へ参拝に行くという傾向は女性を中心に一定の市民権を得たかのような心象がありますが、それも全体からみれば極一部のお話。

 神社本庁に所属している主だった神社だけでも8万8000社以上あると思えば、頭の中に浮かぶ神社の数は些細に過ぎないことが分かると思います。事実、神主という仕事のみで生計を立てることが出来ない神職も多く、税理士や会計士、保険営業マンという副業をもって臨まれる方も少なくありません。

 実は月極駐車場などの社地の有効利用で経済に補填をはかることが出来るのはまだいい方で、今回の下鴨神社の件は、それが由緒ある神社であったということ、また、これが式年遷宮という非常に莫大な予算を擁するということで話題として大きく取り上げられたに過ぎず、多くの神社ではこうした苦境を強いられる神社も少なくないのです。

 そんな中、この神職の兼職率がもっとも低い地域として私も注目しているのが北海道です。こういうと意外に聞こえるかもしれませんが、北海道は神職の専職率が一番高いと言われております。そう、神社だけで生計を立てることができているのです。

 これは意外なことですが、私も実際に北海道に足を運び、そうした事実を教えてもらうまでは、その歴史が浅いことから神社に対する理解は一番低いと思っておりました。しかし、実態はその逆で、多分、神社に対する崇敬心が今一番根付いているのは北海道と言えるかもしれません。それは二つの点から言えます。

 ひとつは、この神職の専業率の高さ。聞けば、90%以上が専業でやっていると言われ、神社業界唯一の新聞社、神社新報によれば、神社の中でも一番上のポジションにいる宮司の全国兼職率が42.5%。そして、その後継者の全国兼職率は68.3%にも上ると言います。北海道の優位性は圧倒的です。

 そして、ふたつは、神札の一般家庭におけるその普及率の高さです。神道では神棚を自宅に飾り、その中に「天照大御神」の神札を祀りますが、この神札の普及率は北海道が全国一位と言われています。これはまさに崇敬心の高さが伺える結果で、要するに、神社にお金を使われる方が多く、そのため、神社だけで生計を立てることができるという好循環を生んでいるのが北海道なのです。

 それではなぜ、こうした結果を迎えることができたのでしょうか。理由はさまざまあるのかもしれませんが、逆に歴史の浅さが逆に功を奏したというのは、一つ言えることなのかもしれません。

 それは、一町一社という区割りが明確化されていたのもそうです。ただ、もっとも特徴的なのは新年に神職が氏子の家を一軒一軒訪問するという習慣が根付いているということがあります。これは他の地域ではあまり聞きませんが、北海道では、札幌のような都心部を除き、こうした習慣が見られる地域が多いと聞きます。

 通常、神社は受動的なものですが、こうした新年のあいさつ回りの結果として、密な関係を築いていったと言えるでしょう。これは歴史ある本州の神社ではなかなか出来ないことです。結局は、氏子一人一人との地道な関係を築いていくしか、生き残る方法はない。

 これは神社のみならず、あらゆるものに通じる考えですが、北海道はそんな当たり前のことを自然とやり続けた結果、今日の状況を迎えているのでしょう。もしかしたら、北海道の神社のあり方が一つのロール・モデルになるのかもしれませんね。

著者プロフィール

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

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