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表向きは公務員、知られざる裏の顔は官能小説作家。そんな女性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに「公務員の信用失墜行為に該当するのだろうか」と不安を書き込んでいた。

女性は公務員として働く傍ら、ペンネームで官能小説を書いている。小説の売れ行きが良かったのか、このたび印税収入を得ることになり、雑誌やウェブサイトに掲載されるインタビューや写真撮影などの依頼を受けたという。

ただ女性は、性的描写のある官能小説の執筆が、公務員の「信用失墜行為」にあたるのではないかと気にしている。また、印税収入を得ることが、公務員の「副業禁止」に違反しないのかと不安に思っている。

今回のケースは、法律で定められた「公務員の信用を失墜させる行為」にあたるのだろうか。そうでなかったとしても、印税収入を得ることに問題はないのか。公務員として働いた経験がある三枝充弁護士に聞いた。

●わいせつ行為や飲酒運転が典型例

「実は公務員時代に、私がストーリーを考えて、友人が絵を描くという形で漫画を作成し、出版社に持ち込みをしていた時期があります。私の場合は報酬が入る前にあきらめたので何事もなかったのですが、今回の相談内容は身につまされます」

三枝弁護士は、自身の体験をまじえてこのように語る。公務員が官能小説を書くことは、女性が懸念している「信用失墜行為」にあたるのだろうか。

「信用失墜行為とは、公務員としての職務の信用を傷つける行為です。国家公務員法や地方公務員法などで定められています。

わいせつ行為や飲酒運転などが典型例です。ただ、官能小説を書いても、ただちに信用失墜行為にはあたらないでしょう」

なぜだろうか。

「官能小説は小説の一ジャンルであり、そのような小説を書くこと自体は犯罪ではありません。内容しだいでは問題になるかもしれませんが、判断は相当難しいと思われます。

たとえば、『犯罪行為が含まれているか』という基準は一見わかりやすいように思われます。ただ、この基準だと、殺人事件を題材にした推理小説を書くことも信用失墜行為になり、違和感があります。

そうすると、少なくとも書店で一般販売できるような内容の官能小説であれば、信用失墜行為にはあたらないでしょう」

●「兼業禁止違反」で懲戒処分の可能性も

では、副業として、小説を書いて印税収入を得ることは、公務員として問題があるのだろうか。

「公務員は、許可を得ずに報酬を得て事業等を行うことが禁止されています。職務に専念してほしいということと、癒着を防止するといった観点からです。

印税が入るということは、おそらく事前に出版社と出版契約を締結しているのでしょう。したがって、報酬を得て事業を行っていると評価され、職場の許可を得る必要があると判断される可能性が高いと思われます」

バレたら女性は懲戒処分を受けるのだろうか。

「職場の許可を得ずに副業をしていたと分かれば、兼業禁止に違反したとして懲戒処分の対象になる可能性があります。事前に許可をとっておくべきだったでしょう」

三枝弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
三枝 充(さえぐさ・みつる)弁護士
会社員(ゲームプランナー)、公務員を経て、2008年に弁護士登録。主に労働者側の労働問題に取り組む一方、会社員時代の知識・経験を活かしてIT関係の事件等にも従事している。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/