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先月27日、NPBの熊崎勝彦コミッショナーは今年の11月に日米野球開催を企画していることを発表した。小久保裕紀監督率いる野球日本代表、侍ジャパンの強化計画の一環だ。これを受けて翌28日の各スポーツ紙は、今季からアメリカ大リーグ、ニューヨークヤンキースでプレーする田中将大の凱旋の可能性を示唆して報じた。

小久保監督率いる「侍ジャパン」にとっては昨年11月に対戦した台湾代表を上回る難敵と思われる対戦。マー君の晴れ姿も観たいが…


(写真:新生「侍ジャパン」全世代結束式記念フラッグ 野球殿堂博物館にて撮影)

◇マー君VS侍ジャパン 今秋凱旋で実現へ!11月に8年ぶり日米野球 −スポニチアネックス 2月28日(金)

◇マーVS侍ジャパン!11月の日米野球であるぞ「夢対決」 −スポーツ報知 2月28日(金)

日米野球が開催されれば、2006年秋以来8年ぶりとなる。

日米野球が開催されなくなったのは、興行として採算が合わなくなったからではなく、日本プロ野球選手会の意向が大きい。

それまで日米野球は二年に一回の割合で、読売新聞社と毎日新聞社が交互に主催していた。日本人メジャーリーガーの凱旋出場も話題になるが、現地に飛ぶか衛星放送でしか見ることが出来ないメジャーリーガーの生のプレーを見ることが出来、日本のトップレベルのプレーヤーとの腕試し的側面もあり、高額な入場料設定にもかかわらず、多くの入場者を集めていた。

だが物見遊山で来日するメジャーリーガーに、レギュラーシーズン終了後で身体のケアを優先させたがる日本選手の存在などもあり、腕試しというよりは顔見世興行的意味合いが濃くなるにつれ、選手会が「11月にも真剣勝負を優先させたい」と主張し、アジアシリーズとの兼ね合いでの過密日程なども含め、日米野球中止を強く望んだ様だ。

ただ今回は少なくとも日本側は、来年、2015年に初開催が予定されている国際大会IBAFプレミア12の前哨戦的意味合いがある。昨秋の台湾代表よりも強い相手と対戦したいというのもあるだろう。MLB側が「IBAFプレミア12」を意識した代表チームを組んでくるかは甚だ疑問だが、MLB選抜を相手に選ぶというのは悪い選択ではないだろう。

ただそこに、田中将大を含む日本人メジャーリーガーをMLB選抜の一員として参加要請するとなると、個人的には疑問がある。

まだ「IBAFプレミア12」の詳細を把握していないが、WBCのような国別代表チームの対抗戦であれば、田中を初めとする日本人メジャーリーガーは日本代表メンバーの有力候補であるはずだ。WBCに日本が連覇した二度の大会では日本代表の一員としてプレーしたメジャーリーガーの松坂大輔がMVPに選ばれた。

敗戦処理。はサッカーには疎いのだが、サッカー日本代表の強化試合でも海外のチームに所属する日本人選手を招集する場合は、彼らは日本代表としてプレーする。「侍ジャパン」が田中やダルビッシュ有らと対戦するのは筋が違うだろう。


五輪の種目から除外され、国別対抗戦は四年に一度のWBCと、今は未知数の「IBAFプレミア12」くらい。にもかかわらずNPBのトップクラスを収集する「侍ジャパン」の常設化を謳うのは、代表チームの強化だけが理由でなく、NPBが貴重な財源にしたいからだろう。サッカーの様に選手に代表資格を常時与えはしないが、監督を決めておけばチームの実態だけはある様に見える。そうすればライセンスグッズも売れる。シーズンの前か後に選手を集めて海外のチームと試合をして収益を得るのが一番てっとり早いのだが、台湾や他の国相手では集客が今一つ。そこでかつて興行として成功を収めていた日米野球の再開という選択肢になったのだろう。


強化試合という名の興行といったところか。“マー君vs侍ジャパン”は報道陣の勇み足かもしれないが、NPBの思惑も大差ないだろう。そもそもバリバリのメジャーリーガーが「IBAFプレミア12」に参加するのも現時点では不鮮明。いっそのこと、“強化試合”と謳うのを取り下げ、日米野球マニアを球場に集める興行にした方が興行収入を見込めるかもしれない。

野球の国際大会が今後どうあるべきかを考えた場合、最も重要なのは日本の代表チームの編成よりもMLBの参加姿勢だろう。物見遊山で来日するメジャーリーガー達が相手なら「侍ジャパン」が全力でぶつかって倒して少しは考えさせられればとも思う。そしてそのためには日本シリーズがゴールという考え方をNPBのプレーヤー達から捨てさせなければなるまい。

最後の日米野球となった2006年に監督を務めた野村克也は代表招集を断った選手の中に「歯の治療をしなければならない」という理由の選手がいたと語っていた。その選手が誰かは知らないが、もしチームが日本シリーズに出ていても歯の治療を理由に欠場したのだろうか?そうではないだろう。日本シリーズに出場しない球団も含め、秋の国際試合までがシーズンという考え方を選手達に浸透させられるかどうか?それを含めた試金石になろう。