奨学金には手を出すな/純丘曜彰 教授博士
/「奨学金」とは名ばかりで、実態は若者を喰いものにする貧困ビジネス。いったん借りたら最後、返済まで20年以上もかかり、きみの一生、一家の将来まで破綻させてしまう。まして、講義をサボり、単位を落とすと、卒業もできず、就職もできず、わずか数年で廃人に墜ちることになる。/

 四月からの新生活を夢見る若者たちに水を差して悪いが、奨学金には手を出すな。あれは典型的な貧困ビジネスだ。人生のスタート前から借金まみれなるぞ。かろうじて自分はうまく返済できても、子々孫々まで、借金まみれになるぞ。

 そもそも「奨学金」なんていう名前がインチキもいいところ。本来の奨学金、英語のスカラーシップは、まさに将来ある有為の若者の勉学を奨励するもので、日本でも、大学や企業、県人会などが無償の善意で、学費免除や生活支援をしている。一方、日本で一般的な旧「育英会」、現「学生支援機構」のものは、英語のスチューデント・ローンと呼ぶべき、ただの巨額の個人の借金。なのに、金利その他を補填している分が奨学金なんだ、などと屁理屈を言う。やつらは、世間知らずの若者を喰いものにする天下りの闇金屋。

 本来の渡し切りの奨学金は、若者の将来性を見極める側も、共にリスクを負うのが当然。だから、かなり慎重に人物を審査厳選する。ところが、学生支援機構の二種奨学金は、年収1300万円以上(在学中なら年収1485万円!)の家庭で、並み程度の成績でも申請できてしまう。この審査は、大学側の学生委員会が行うことになっているが、時勢からして家庭の経済事情を個別に根掘り葉掘り調査するわけにもいかず、本人の申請があり、枠に余裕がある以上、事実上のフリーパス。そのせいか、在学中無利息で、月12万円もくれる、となれば、もらわないと損、みたいなバカが出てくる。

 だが、月12万円で4年間借りると、卒業時には576万円の借金だ。これに年利3%。まともに就職できても、大卒の正社員初任給は月20万円弱。ただでさえ新社会人は、いろいろ出費が多い。年末にボーナスから17万円を返済しても、元金は減らない。無理をして最初から毎月3万円以上を返済しても、年間で36万円、元金は19万円ずつしか減らない。総額は775万円にもなり、完済まで最低でも20年。つまり、22歳で卒業しても、42歳以降まで借金に追われ続ける。結婚して、子供にカネがかかるようになってもなお、自分の学費の始末を続ける。家なんか持てるわけがない。そして、子供もまた奨学金。一家一族、子々孫々まで、ずっとまるまる借金漬けで貧困世帯に墜ちていく。

 まして、もしも正社員に就職できなかったら、借金は複利で雪だるま式に膨れあがり、返済の目途など立ちようも無い。そんな借金まみれのサイマーなんか、まともな就職や結婚ができるわけがない。もっとミジメなのが、在学中に破綻するやつ。奨学金の審査は、最初だけではない。在学中に、毎年、継続願を出さなければならない。ところが、その都度に「適格認定」があって、講義をサボり、単位を落とすと、奨学金は打ち切り。ただちに退学、返済とならざるをえない。高校で並み程度でも、大学に来れば、みなそれ以上なのだから、並み程度にチンタラやっていたら、まちがいなく並み以下に落ち、奨学金も打ち切られる。そして、ただでさえ就職難の時代、並み以下の成績の大学中退サイマー廃人に、まともな仕事などあるわけもなく、こうなると、死ぬまでカネの取り立てが続くだけ。

 これが現実。奨学金の甘い誘惑は、きみの将来を破綻させる呪いだ。カネが無いなら、本気でがんばって、成績優秀者として、大学の学費免除、企業や県人会などの本物の奨学金を取れ。生活は、ただ勉強のためだけと割り切って、三畳一間の下宿に転がり込み、臥薪嘗胆の四年を過ごせ。どうしてもやむなく奨学金に手を出すなら、他の学生と自分は別の世界に生きていると腹をくくり、ひたすら勉学にだけ打ち込め。