マヨネーズは腐らないって本当?「腐りにくい。酢と食塩が、驚異的な抗菌効果を生み出す」
老若男女を問わずファンが多いマヨネーズ。お好み焼きからゆで卵と守備範囲も広く、カレーを超える国民食と言える調味料だ。
世の中では「マヨネーズは腐らない」と言われているが、本当だろうか? 厳密には「腐りにくい」が正解で、含まれる酢と食塩で病原菌を繁殖させない。他の食材も腐敗から守ってくれる強い味方なのだ。
■調味料、改め消毒剤!
マヨネーズの起源は18世紀で、スペイン・メノルカ島の料理店で、肉に添えるソースとして誕生したと言われている。おもな材料は卵黄、塩、食塩、サラダオイルなどの油脂と、どの家庭にもあるものだけで作れる。卵黄を使うだけに傷みやすいイメージが強いものの、食塩と酢のおかげで防腐作用が強い。
大手メーカーのwebでは、食中毒の原因となるブドウ球菌を入れたところ、どちらも24時間以内に死滅したという結果が示されている。ひとの腸内にも住んでいる大腸菌なら6時間でやっつけるというから、調味料でありながらパワーを持っているのだ。
食塩と酢は、どちらの殺菌力が強いのか? 答えは酢で、単純に表現すれば食塩の90倍ほど強い。茨城県工業技術センターの資料では、大腸菌の増殖を最小限に食い止めるための濃度・MIC(最小発育阻止濃度)は、食塩の9%に対し、酢はわずか0.1%で済む。
お酢メーカーの実験では、0.1%で菌の増殖を止める「静菌」、2.5%まで増やすと菌を死滅させる「殺菌」できるとのデータがある。この濃度の酢と、生死に関わるような極悪・菌との対決結果は、
・腸炎ビブリオ … 静菌=良好 / 殺菌=良好(15秒以内)
・腸管出血性大腸炎 … 静菌=良好 / 殺菌=可(150分)
・ボツリヌス菌 … 静菌=0.3%で効果あり / 殺菌=不可
と、食中毒の代名詞・腸炎ビブリオなど15秒でダウンさ。
ボツリヌス菌は生物兵器と呼べるレベルなので、殺菌がムリでも押さえつけるだけで健闘だ。腸管出血性大腸炎は猛威を振るったO-157の総称だから、お酢は食品/調味料の範囲で「ほぼ無敵」と言える。
スゴいぞマヨネーズ!ついでに虫歯もやっつけてくれ!
■しょっぱい!でも効かない!!
対して食塩はと言えば、少々非力だ。食塩の濃度と、1時間/6時間後の大腸菌の量をみると、
・5% … 106.67% 106.67%
・10% … 93.33% 57.33%
・15% … 45.33% 28.67%
・20% … 40.00% 21.33%
と、なかなか減らないどころか、増えてるってナニゴト!?
お椀にあけるタイプの即席みそ汁の栄養成分をみると、お湯160gに対し食塩相当量は1.5〜1.7gなので、ほぼ1%となる。5%はとんでもなくしょっぱいはずだが、菌は死なない。がっかりだよ、塩。
マヨネーズがスゴいのは、酢と食塩の両方を持っていることで、この2つが合体すると爆発的に抗菌作用が高まる。
同じく茨城県工業技術センターのデータから、食塩、お酢の濃さ、6時間後まで生き残る大腸菌の量をみると、
・食塩5% + お酢0.1% … 0%
・食塩20% + お酢0.1% … 0%
・食塩0.85% + お酢0.2% … 16.67%
と、5%の食塩だけでは増えた菌も、たった0.1%のお酢を加えるだけで菌の繁殖を防ぐ。逆に、圧倒的と思えたお酢を2倍にしても、食塩0.85%では効果が薄いことも分かる。食塩と酢のバランスこそが強い抗菌力を生み出しているのだ。
防腐作用は他の食品にも作用する。菌が繁殖しやすいポテトサラダなども、マヨネーズを混ぜると傷みにくくなるのだ。
ポイントは「完全に混ぜる」「覆いつくす」の2点で、ちょっと付いているぐらいでは効果を果たさない。食べきれなかった野菜スティックの先にマヨネーズを塗った程度では期待できないので、誤解なきよう。
■まとめ
・マヨネーズは18世紀に誕生した、らしい
・卵白/食塩/お酢など、どこの台所にあっても当たり前の材料
・お酢と食塩の組み合わせが、驚異的な抗菌効果を生み出す
暖かくなるにつれ食中毒も増える。お弁当派のひとは、マヨネーズを上手に活用して頂きたい。
(関口 寿/ガリレオワークス)