12月2日に発生し、通行中の車3台が下敷きになって9人の死亡者を出した、中央自動車道の笹子トンネル(山梨県・大月市/甲州市=全長約4.7キロ)での崩落事故。車のトンネル事故としては、1979年に起きた東名高速日本坂トンネル火災事故(7人死亡)を上回る大惨事となった。

 県警は業務上過失致死傷容疑で捜査を始めており、前代未聞の事故は今後、遺族への補償問題に焦点が当てられそうだ。
 「崩落した天井板は、1枚当たり幅5メートル、奥行き1.2メートル、厚さ8センチ、重さは約1.2トン。設置された監視カメラのモニター画面には、センターラインに向かってVの字形に、一気に約100枚が崩れ落ちた姿が映し出されていました。管理・運営していた中日本高速道路の発表によれば、崩落した天井板をつる金具をトンネル上部のコンクリートに固定するボルトが、現場付近で抜け落ちていたとのこと。事故直後からの緊急点検では金槌で叩いた音で異常を確認する『打音検査』に切り替えましたが、それ以前はボルト部分について目視のみで確認していたことも判明している。管理体制の不備を指摘されることは間違いありません」(社会部記者)

 ただし、補償問題に関しては、ジャーナリストの大谷昭宏氏が、「亡くなった方が将来得るはずだった利益を算出し、遺族には1人6000〜7000万円が支払われるのがこれまでの例」としたうえで、こう問題を提起する。
 「列車脱線事故などもそうですが、日本の刑法は組織や団体を裁くことができないため、あくまで個人の責任を追及することになります。しかし今回の事故の場合、たとえ老朽化が分かっていたとしても、事故の“予見可能性”や“結果回避”ができたかというと、その担当者に責任を問うことは難しいと思います。いずれにせよ、運営する中日本高速道路に裁判で責任を問うことは大変な労力を要する。安全管理を怠る組織を、処罰できるように法改正しないと難しい状況なのです」

 いずれにしろ、解決は長引きそうだ。