ツイッターで「とても悲しい」と孫社長

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ソフトバンクの孫正義社長が、ツイッター上でのユーザーによる「罵倒」に反応した。「売国奴」と書かれたことに「たとえ言いがかりだとしても、とても悲しい」と心情をつづったのだ。

孫社長に対する批判の書き込みはツイッターでしばしば見かけるが、「売国奴呼ばわり」は見逃せなかったようだ。

日本語や文化、食事が「一番しっくりくる」

きっかけは、孫社長の寄付金に関するツイートだった。米東海岸を襲ったハリケーン「サンディ」で被害を受けた人たちに、ソフトバンクが米赤十字に50万ドル(約4000万円)を寄付すると2012年11月3日に書き込んだ。これにひとりがかみついた。公表したことについて「寄付まで商利用するな」と非難したのだ。これには孫社長も「色々な想いが有って公表しましたが、今後は公表を控えるベキなのかなあ」と少々弱気な反応を見せた。

ところが今度は、この返答に別のユーザーが「難癖」をつけた。その際、孫社長を指すとみられる個所に「売国」との表現を使ったのだ。すると、このユーザーに向けて、

「私は自らが生まれ育った日本を愛し、また世界の人々の幸せを願っています。売国奴と言われる意味がわかりません」

と反論。さらに「たとえ、それが言いがかりだとしても、とても悲しい想いをしています」と続けたのだ。

このやり取りに、ツイッターやインターネット掲示板上ではいろいろな意見が出た。「孫さんかわいそう」「汚い言葉に説得力なし」と孫社長を擁護する発言もあれば、「積極的な反日・売国奴とも思わんけど、こいつが愛国者なわけがない。ただ金儲けが好きなだけ」と突き放した見方もある。一般ユーザーの書き込みにわざわざ反応しなくてもいいのでは、と疑問視する声もあがった。

確かに「売国奴」と言われて喜ぶ人はいないが、多くの批判コメントを受けているはずの孫社長でも、どうしても許せなかったのだろう。孫社長の半生を描いた「あんぽん 孫正義伝」の中で、筆者の佐野眞一氏が本人に「何でそんなに日本が好きなんですか」と直球の質問を投げている。その回答は、こうだ。

「僕は生まれたのも日本だし、育ったのも日本ですからね。一番しっくりくるのは、やっぱり日本語であり、日本文化であり、日本の食生活なんですよ」

「生きていくのにさまざまなつらいことがあった」

孫社長は1957年、佐賀県鳥栖市に生まれた。祖父母の代に韓国から渡ってきた在日韓国人の家系だが、「あんぽん」によると本人は1990年に帰化している。

2010年6月25日に行われた「ソフトバンク新30年ビジョン」発表会では、子どもの頃の経験について言及した。壇上のスクリーンに祖母の画像を映し出し、祖母との思い出を語り始めた。ところが「あれほど好きだったおばあちゃんが、嫌いになった」と言う。「おばあちゃんイコールキムチ、キムチイコール韓国なんです」。詳しく事例を語りたくないとしつつも、当時は「生きていくのにさまざまなつらいことがあった」と振り返った。

「あんぽん」の中でも、子どもの頃に差別を受けたと告白している。だが、「でもそれはいつの時代でも、なにがしかはあったことですよ」と受け止めた。そのうえで、

「僕はやっぱり、生まれ育った国を愛し、その生まれ育った国に少しでも恩返ししたい、貢献したい。それが掛け値なしの純粋な気持ちです」

と強調した。たとえツイッター上で相手が見知らぬ人だとしても、自分の「純粋な気持ち」を否定する「売国奴」のひと言は無視できなかったのだろう。