国内のゲームショーには参加せず、自社イベントを仕掛ける戦略を貫いてきた任天堂が、11月18日開幕の米ロサンゼルス国際自動車ショーにゲーム機メーカーとして初めて出展し、関係者の度肝を抜いた。

 特等席ともいえる会場出入り口に一番近い場所にブースを設けて展示したのは、なんと“実物大のマリオカート”。年末商戦の目玉、12月1日発売の新作ゲーム『マリオカート7』のコンセプトカーだという。
 海を隔てた日本の扱いは地味だったが、米国メディアは「任天堂が実物大のマリオカートを発売!?」と大きく報じており、思惑はドンピシャリだった。

 一体、異業種の自動車ショーに参入した理由は何か。
 「任天堂は来年3月期に初めて最終赤字に転落するとの予測で、尻に火がつき危機感を募らせたから、もうなりふり構っていられないのでしょう。動かない自動車を出展したことに対し、自動車関係者は『プライドをかなぐり捨てたということか』と、妙に納得していました」(経済記者)

 実際、経営は急速に悪化している。当初は200億円の黒字と見込んでいた来年3月期の最終損益(今年3月期は778億円の黒字)は一転して200億円の赤字に転落の見通し。新型ゲーム機『ニンテンドー3DS』の販売が低迷、8月の値下げで逆に採算が悪化している。

 その突破口として岩田聡社長が期待を寄せるのが、キラーソフト『スーパーマリオ』シリーズの最新作というわけだ。しかし、業界関係者は実に辛らつだ。
 「自動車ショーで話題を呼んでも『マリオカート7』の販売に直結しなければ意味がない。当然、ショーに足を運ぶ客層との違いがあります。すぐ商売に結びつくほど甘くありません」

 “ダッシュキノコ”で一気に上位浮上するマリオカート同様に、果たしてこの英断が赤字地獄脱却の“アイテム”となるかどうか、岩田社長は神にも祈る心境に違いない。