サッカー協会90周年記念パーティー
(9月12日 東京・ホテル・グランドパレス)

★「教え込んでも、育たない」
 日本サッカー協会の創立90周年の記念パーティーが、9月12日の午後、東京のホテル・グランドパレスで開かれた。約700人が会場を埋めつくした盛大なパーティーだった。
 協会名誉総裁の高円宮妃殿下が最初に挨拶をされた。
 ふつう、高い身分の方のスピーチは儀礼的な当たり障りのない内容であることが多い。ところが、この日の妃殿下のお話は、いつもより長く、内容も個人としての意見を述べた異例なものだった。
 お話の中に「教育は教えて育てるという言葉だが、上から教え込んでも子どもたちは育たない。子どもたちは、自分から学ぼう、教えてもらおうという気持ちになって、育って行くものだ」という趣旨のお言葉があった。
 「すばらしい、その通りだ」と、ぼくは心の中で大きくうなずいた。

★自ら伸びていける環境づくりを
 「なでしこJapan」がワールドカップで優勝し、オリンピック・アジア予選にも勝った。
 その活躍を見て「サッカー協会が女子サッカー育成につとめた成果だ」という人がいる。
 「協会がしっかりした指導方法を地方に徹底させているから、これからも、いい女子選手が、どんどん出てくるだろう」と女子代表チームの佐々木則夫監督も言っていた。
 「そうだろうか?」と、ぼくは思う。協会が「育成」に努力していることは間違いないだろうが、それによって「第二の澤穂希、第二の宮間あや」が育ってくるだろうか?
 創造性に富む個性豊かなプレーヤーは、技術と戦術を教え込んで作り出すことはできない。自ら考え、自ら学ぼうとする子どもたちに、自ら伸びて行くための「いい環境」を与えることのほうが、マニュアルを押しつけるよりも大事である。
 高円宮妃殿下の異例のお話は、それを指摘したものだと思った。

★「ベレーザ」が育てた「なでしこ」
 今回の「なでしこJapan」のメンバーの中に「ベレーザ」でプレーした選手が10人いる。
 1980年代の読売サッカークラブ、1990年代以降の「ヴェルディ」の女子チームが「ベレーザ」である。
 読売サッカークラブ以来の伝統は「教え込まないこと」だった。よみうりランドのフィールドで、5対1やミニゲームや紅白試合ばかりをしていた。そういう中から男子も女子も個性的なプレーヤーが生まれた。
 「なでしこJapan」の選手のなかの多くは、よみうりランドに縁のあるプレーヤーか、その周辺育ちである。かつて「清水第八」を生んだ静岡育ちは一人もいない。なぜだろうか?
 日本の女子サッカーの「これから」のために、こういう例をきちんと調べて、「育成」とは何かを考えてほしい。