最近、地震があちこちで頻発しているような気がしますが、それはともかく―。

昨日、アルゼンチン代表の練習をのぞきに行った。バルサの3人(マスケラーノ、ガブリエル・ミリート、メッシ)とイグアイン(レアル・マドリー)は、1日遅れで来日するとのことで、姿を拝むことはできなかったが、その他のメンバーはバッチリ揃っていた。

こういうことはいつ以来だろうか。いわゆる世界の強豪が、ほぼベストメンバーで来日するのは。

思い出すのは、いまから8年前、つまり02年11月「埼玉スタジアム」で行われた一戦だ。相手は同じくアルゼンチン。

サムエル、クラウディオ・ロペス、クレスポ、オルテガ、ソリン等々、日韓共催ワールドカップに出場したメンバーとほぼ同じ顔ぶれが、日本にやってきた。

どう頑張っても敵わない相手。それは試合前からハッキリしていた。アルゼンチンは02年日韓W杯でまさかのグループリーグ落ち。片や日本はベスト16に進出した。成績では日本が上回っていたにもかかわらず、だ。両者の間にはいま以上に大きな開きがあった。

アルゼンチンは当時、3−3−3−1というか3−3−1−3的な3−4−3を敷いていた。理由は分かりやすい。監督がビエルサだったからだ。02年ワールドカップではそれが功を奏さなかった。効果を発揮することなくグループリーグで沈んだ。しかし、続く04年アテネ五輪で、ビエルサ・スタイルは全開。鮮やか度100%と言いたくなる見事なサッカーで優勝を飾った。

片やジーコ率いる日本4−2−2−2。サイドハーフ不在の布陣で臨んだ。

隔世の感がする。もはやあり得ない出来事に思える。僅か8年前の話だというのに、だ。さらに言えば、岡田ジャパン時代も、そのあたりに拘りのないサッカーを展開してきたにもかかわらず、
だ。

日本サッカーは急変した。南アワールドカップ初戦、対カメルーン戦以前と以後とで、そのサッカーは一変した。僕にはそう思えて仕方がない。

で、気がつけば、それがスタンダードになった。ザッケローニの代表監督就任で、それは決定的なものになった。もはやサイドハーフ不在の4−2−2−2や、5バック同然の3−5−2を、代表チームのサッカーに見ることはない。そう言いきっていいと思う。まさに大変身を遂げたわけだ。

いったいなぜ。どうして岡田サンは「本田の0トップ」を思いついたのか。そのあたりについては、本日発売の「日本サッカー現場検証 あの0トップを読み解く」(実業之日本社刊)に、たっぷり書き記しているが、とはいえ、理由不明なあの大転換が、日本サッカーに与えた影響は大きい。ベスト16という成績よりも、僕は遙かに重大な事件、大きな進歩に思える。

サッカーを上手に戦うコツを遅まきながらつかんだと言うべきだろう。日本サッカーはようやく開眼することに成功した。

もちろんだからといって、次回のブラジルワールドカップで、ベスト16以上の成績を収めるとは思っていないし、金曜日のアルゼンチン戦、来週火曜日に行われる韓国とのアウェー戦についても、結果に対して楽観的でいるわけではない。ただ少なくとも、見栄えは格段に良くなっているはずだろうし、効率も上がっているに違いない。その点については保証できる。

対戦相手の実力を踏まえた上で、サッカーの中身を見る。可能性を探る。大切なのはこの姿勢だ。アルゼンチンに完敗し、韓国に惜敗しても、そのあたりに満足感を抱ければ、僕的にはオッケーだ。

何と言っても、相手が強そうだからだ。韓国は、南アワールドカップで日本と同じベスト16に進出しているが、中身では日本より一枚も二枚も上回った。まさに好チームだった。

片やアルゼンチンは酷かった。お世辞にも良いサッカーとは言えなかった。メッシを2トップ下に置く、古典的な10番スタイルのサッカーで戦い、準々決勝でドイツに屈辱的なスコアで屈した。ただし、監督さえちゃんとしていれば、そうした問題はすぐに解決するわけで、実際、現監督のバチスタは、マラドーナほど酷くない。というか、比べものにならないほど良い。強国らしさを、短期間で取り戻している。

アルゼンチンは強い。韓国も悪くないはずだ。で、日本も遅まきながら開眼した。結果はともかく、少なくとも見てガックリすることはない。

と言うわけで、僕の観戦のモチベーションは、珍しいほど上がっているのである。

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