クラブW杯がUAEで開催されている。サッカーファンの方なら開催されていることを当然知っていると思うが、開催地が日本からUAEに移ったことで、日本国内での露出は例年に比べ少なく、注目度が低いことは言うまでもない。サッカーファンでも、気がついたら試合をやっていた、というような人も多いんじゃないかな。「クラブチームのW杯」と謳うには、あまりに寂しい状態だ。

その寂しさは現地UAEでも変わらないようだ。日本開催時は1回戦でもそれなりに観客が入っていたが、UAEの人々はより正直なのだろう。アジアやアフリカ代表のチームの試合にはまったく興味がないといった様子だ。南米代表は強いが、残念ながらお客を呼べない。

それでも、真打ちともいえるヨーロッパ代表のバルセロナの登場で、16日の準決勝はたくさんお客さんが入ったようだ。計算されていたことが、そのとおり起きたわけだ。
バルセロナは確かに強かった。世界ナンバーワンともいえるそのサッカーで、詰めかけた観客やテレビの前の人々を大いに魅了してくれたね。
しかし、本当にこれでいいのだろうか。果たしてこれが「W杯」なのか?

この大会は、前身のトヨタカップの規模を拡大して造られたものだけど、クラブ世界一を決める大会という大義名分を盾に、FIFAと日本サッカー協会の前会長(現名誉会長)によって、完全なるビジネスとして生み出されたものだ。
日本で開催したときは、カズや岩本テルをオセアニア代表チームに入れて話題性を作り、無理矢理盛り上げてきた。カズや岩本に罪はないけど、W杯と称するには、あまりにサッカーの本質からかけ離れた大会だ。

今回、日本の王様から中東の王様に利権が移ったわけだけど、相変わらずヨーロッパ、南米の2強と、その他の大陸との間には果てしない実力差があり、大会の価値が改めて疑問視され、本分のビジネスの面でも成功とは言い難い状態だ。

今度また日本に戻ってきても、お荷物なんじゃないかな。というか、どこの国で開催しても、この大会から醸し出される微妙な空気は変わらないだろう。
これから何十年先、世界中のクラブチーム、サッカー選手にとってどうしても獲得したい夢としてこの大会が成熟していく姿を、誰が想像できる? 僕はできない。王様の利権絡みで生まれたインチキW杯に、未来はないよ。(了)


セルジオ越後 (サッカー解説者) 
18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中