講演の動画をクラウドソーシングで翻訳:40カ国語で閲覧可能

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Kim Zetter

『TED』(テクノロジー、エンターテインメント、およびデザイン)会議が、同会議における有名な講演の動画を翻訳する新しいプロジェクトを開始し、人びとの協力を求めている。

TED会議は、スウェーデン人の大学教授をロックスターへと変え、Jill Bolte Taylor氏の脳卒中体験に関する洞察(日本語版期時)を世界に紹介するなど、話題の多い会議だ。

TED会議は、年会費6000ドルを支払う各界のエリートだけが参加できる招待者限定の会議だが、2004年からオンライン上に講演のビデオを無料で公開し始めた。それ以降、これらの動画の視聴数は1億回を超えている。だが、今までは英語の動画しか公開されていなかった。

5月13日(米国時間)に開始された『Open Translation Project』では、[不特定多数の人が作業を担当する]クラウドソーシングと高性能のマークアップ言語を組み合わせ、インデックス化が可能で、キーワードで検索できる、複数言語の字幕付き動画を提供している。素晴らしい点は、講演の字幕にあるどんな語句でも、クリックすると動画の該当部分へと飛ぶことができるということだ。

このことはまた、各動画のキーワードが外部の検索エンジンによってインデックス化されるということも意味している。「green rooftops」(植物を生やした屋上)という語をGoogleに入力すれば、検索結果ページに表示されるリンクのなかに、ブロンクスにおけるグリーンルーフ・プロジェクトについて説明するMajora Carter氏の講演の該当部分に直接つながるものがおそらく見つかるだろう。

アラビア語からウルドゥー語まで、すでに300本もの動画が40の言語に翻訳された。一部の講演はプロの翻訳家によって20の言語に翻訳されたが、多くは世界中の200名以上のボランティアが手がけた。さらに450本の動画の翻訳が進行中だ。

TEDサイトのTalksページにあるドロップダウン・メニューで、言語によって動画を分類することができる。

動画の翻訳には誰でも登録できる。だが、翻訳の質の管理と、不適切な情報を翻訳に導入しようとする厄介な人物が参加するのを防ぐために、各動画に対し少なくとも2名の流暢な翻訳家が必要とされ、相互チェックが行なわれる。

フィンランドNokia社がこの字幕プロジェクトのスポンサーを務めている。また、多言語対応動画サイト『dotSUB』が、字幕作成用のプラットフォームを提供した。

TED Mediaの統括責任者を務めるJune Cohen氏によると、他のグループも彼らのプロジェクトに注目しており、似たような翻訳プロジェクトを開始することに関心を持っているウェブサイトもあるという。

「われわれは、双方向性のある字幕によってオンライン動画をより徹底的に利用しやすくするということを通して、ウェブが向かう方向性に関して、概念を実現できるという具体例を生みだし、見本を提供したいと考えている」と、Cohen氏は語った。

WIRED NEWS 原文(English)

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