フランスのW杯優勝10周年を記念して、98年の決勝と同じ7月12日、同じ場所のスタッド・ド・フランスで、メモリアル・マッチが開催され、8万人の観衆が詰めかけた。98年W杯の優勝メンバーを中心に構成される非営利団体「フランス98」が、チャリティーを目的に企画した。

 試合は「フランス98」と「世界選抜」の間で行なわれた。W杯優勝メンバーからは、同組織の運営に批判的なエマニュエル・プティ(元アーセナルなど)と、休暇中のアンリ、ヴィエラの3人を除く全員が集まった。当初、参加が伝えられたアネルカ、ビルトール、ミクーらユーロ2000の優勝メンバーは参加しなかった。

 一方、ベンゲルとストイチコフが指揮をとる「世界選抜」には、中田英も背番号7をつけて参加。往年の名選手や、ソング、ダービッツらの現役組に混じり、先発メンバーとして前半のみプレーし、かつてのチームメイト、ヴァンサン・カンデラ(元ASローマ)やサブリ・ラムシ(元パルマ、特別招待)らと旧交を温めた。

 当時のエメ・ジャケ監督率いる「フランス98」の先発は、プティのポジションにルブッフが入り、警告累積でW杯決勝に出場できなかったブランがセンターバックを務めたほかは、10年前のブラジル戦とまったく同じ布陣。テュラム以外はすべて引退しているが、レベルの高いテクニックの健在ぶりを見せた。とくにジダンがスーパープレーを連発して観客を沸かせた。

 試合は、ブトラゲーニョ(元スペイン代表)のゴールで世界選抜が先制。フランス98も再三ゴールに迫るが、現役のソング(カメルーン代表、ガラタサライ)に阻まれる。ようやく後半21分にジダンのゴールで同点に追いついてスタジアムを沸かせるが、引退したばかりのパウレタ(元ポルトガル代表)がすぐに2点目を入れる。

 ジャケ監督は終盤、ピレス、トレゼゲ、ジュリ(特別招待)、ダクール(同)といった現役組を相次いで投入した。奇しくも、ドメネク現代表監督に「干された」選手ばかりだ。とくに代表引退を表明したばかりのトレゼゲには観客席から大声援が送られた。

 トレゼゲのパスを受けたジュリのゴールで同点に追いついたフランス98だが、試合終了間際に98年W杯の得点王シュケル(元クロアチア代表)の“非情のゴール”で再びリードを許す。しかしディオメッドがロスタイムに左足でファインゴールを決め、8万の大観衆の期待を裏切らない“ハッピーエンド”で幕を閉じた。

 リザラズとともに90分間フルにプレーしたジダンは、中継局カナルプリュスのインタビューに「ちょっと疲れた。テクニックはそう簡単に衰えないが、体力が衰えるとキツイね」と答えながら、ジュール・リメ杯を掲げ、笑顔で場内を一周して観客に感謝を表した。