東急コミュニティーは、30代以上のマンション居住者の男女3128人を対象に、災害対策の実態や防災意識に関するアンケートを2017年10月に実施し、11月に結果を発表した。

集まった回答を震災被害経験者と非経験者に分けて比較、分析したところ、人々の災害対策の実態と課題が明らかになった。

事前のシミュレーションの重要性


経験から学ぶ、震災時にまずやるべきこと(画像はイメージ)

アンケートは、3大都市圏と「1995年以降に最大震度6弱以上の地震によって震度5強以上を観測した地域」の住民を対象とした。回答者の内訳は、震災被害経験者が1484人、非経験者が1644人。

災害時の初動については震災被害経験者と非経験者で差があり、「もし今から30秒以内に震度6弱以上の地震が起きるとしたら何をするか?」という質問に対し、経験者の中で「わからない、何もしない、じっとする」と答えたのは12.0%で、非経験者よりも7.4%低く、また、具体的な行動を答える割合も高かった。震災被害経験者は、過去の経験に基づき、具体的な行動を想定できていると考えられる。



また、過去の体験からか、家庭単位での災害対策「自助」の項目においても、災害経験者は非経験者と比較して防災意識が高い傾向にあった。

家庭単位の災害対策として、「自助」があげられる。災害時には、家具の転倒防止などの「命のリスク」、水やコンロ、乾電池や懐中電灯の用意といった「ライフラインへのリスク」、眼鏡や薬、貴重品を持ち出せるようにしておく「生活必需品のリスク」の3つについて準備が重要だが、それらすべてにおいて、経験者は非経験者よりも実施している割合が高かった。



その一方で、事前シミュレーションの点では、経験者、非経験者ともに実施率が低いという結果も出た。

避難場所やハザードマップの確認はともに約半数の人が実施しているものの、「家族と災害発生時の想定や行動を話し合った」(経験者25.4%、非経験者19.0%)、「家族と災害時の集合場所や連絡方法を確認した」(同20.7%、13.7%)など、事前のシミュレーションを家族と行っている割合は低かった。



そのことから、災害を事前にシミュレーションし、対策することの重要性について、発表リリースでは「いっそうの普及啓発が求められる」と指摘されている。

集合住宅で重要となる、マンション単位でお互いに助け合う「共助」の項目では、共助意識の潜在的な高さが明らかになった。

災害時に「自発的に近隣を助けようという意識」は、全体では78.6%の人が持っており、中でも戸数が500以上の大規模なマンションにおいては83.4%が「助けたい」と回答した。マンションの規模が大きくなるほどに管理組合によるイベントや避難訓練への参加率が高いことが影響し、そうしたイベントを通して共助意識が高まっていると考えられる。



これらの調査結果に、東京大学生産技術研究所の目黒公郎教授は、

「震災体験の有無にかかわらず、マンションに住まう人々全般の防災に対する意識や備えが、思った以上に不足している状況が明らかになりました」
「日頃から災害時の状況をシミュレーションする習慣を持ち、より精度の高い状況認識に基づいて、世帯やマンションごとでも変わる準備すべきコト・モノを具体化し、実効性の高い事前対策を備えておくべきです」

などと、コメントを寄せた。