就活生はどの就職ナビを活用しているのか?(写真:Graphs / PIXTA)

あと半月もすれば、1年で一番日が短い、冬至となる。いよいよ冬本番を迎えることになるが、その寒さのピークが過ぎる3月1日は、就職活動のハイシーズンが始まる日だ。採用広報が正式に解禁され、就職情報会社のサイトには、多数の採用情報が公開、プレエントリーの受付も同時にスタートする。

マイナビリクナビの利用率は9割!


今回、2018年卒の学生たちがどの「就職ナビ」(就職情報サイト)を使っているのか、検証した。使うデータは、HR総研が今年6月に楽天「みん就(みんなの就職活動日記)」と共同で行ったアンケート調査だ。HR総研が6月に実施した企業調査も参考にしている。

「活用した就職ナビ」について質問すると、リクナビマイナビが利用率90%を超えており、両者が“双璧”だ。3位には「みん就」が入っているものの、調査元のサイトであることを考れば、割り引いてみたほうがいいだろう。かつて「日経就活ナビ」という名称だった「キャリタス就活が5〜6割で続く。その他のサイトはほぼ3割以下で、その差は大きい。

実は、今回の調査で最も注目すべきなのは、”逆求人型”(ダイレクトリクルーティング型)の就職ナビの台頭かもしれない。特にi-plug(アイプラグ)が運営する「Offer Box」の伸びが顕著。2017年卒文系が10%だったが、2018年卒は18%に拡大し、理系も6%から14%と倍増している。アイデムが運営する「JOBRASS」も、文系は前年の19%から21%、理系も12%から15%に増加している。

採用では、選考や広報の解禁日が話題になることはあるとはいえ、採用のメカニズムそのものの変化はほとんどなかった。学生が就職ナビ掲載企業にプレエントリーして採用母集団を形成し、その登録者にふるいをかけて選考する仕組みである。


学生は内定取得率を上げるため多数の企業に応募して就活するが、それによって多くの学生はかなり疲弊してしまう。一方では企業のストレスも大きい。採用学生数は限られているのに、その何倍もの大量な応募が来るからだ。とはいえ、応募学生には公平に接しなくてはならず、手間がかかる。求める人材像に合致する学生に内定を出しても、裏切られて他社に採られることもある。

このような新卒採用メカニズムのド真ん中に位置してきたのが就職ナビだ。日本型新卒採用への貢献は大きいものの、学生と企業の双方にとって、大きな負担になっていることも否めない。

逆求人型で学生が自分を”宣伝”する

もしかするとこういう日本独自の採用スタイルは変わるかもしれない。逆求人型の就職ナビでは、企業が自社を宣伝しない。宣伝するのは学生だ。自身のエントリーシートを、逆求人型の就職ナビに登録して、企業からのオファーを待つ仕組みだ。

逆求人型の就職ナビは、以前から存在していたが、就活の王道ではなかった。利用企業は、就職ナビでは採用母集団を形成できない中小企業が多く、登録学生数も少なかった。しかし、今回の調査では、2割近い学生が「JOBRASS」や「Offer Box」を活用しており、学生数の増加が顕著になっている。

企業側の意識も変わってきており、逆求人型の就職ナビを利用する大手企業は増えている。採用母集団の数を追い求め、そこからふるいをかけていく従来型の採用は、これからも継続するだろう。が、多くの学生から選抜しても、優秀な学生を採用できるわけではない。採用母集団に自社が求めるタイプの学生がいなければ意味はない。

仮に求めるタイプの学生が含まれていたとしても、大量の学生をさばく採用活動では、画一的で浅薄なコミュニケーションしかとれず、優秀な学生を見落としてしまうかもしれない。また、見つけ出したとしても学生への十分な動機づけもできないまま、内定を出すことにもなりかねない。

従来型の就職ナビではプレエントリーして来ない、自社の求めるタイプの学生を集中して囲い込み、密度の濃いコミュニケーションをとりながら展開する採用スタイルは、確実に広がりつつある。

とはいうものの、リクナビマイナビの重要性は変わらない。今回の調査では、同時に、「最も活用した就職ナビ」を1つ選んでもらっているが、まだまだ両者は圧倒的に強い。

この2つのいずれかをメインにする学生は8割以上にものぼる。ただ文系と理系で人気は分かれている。文系では、「マイナビ」44%に対し、「リクナビ」37%と、7ポイントもの差がある。逆に理系では、「マイナビ」35%に対して、「リクナビ」43%と、8ポイントの差がついている。

両サイトとは対照的に、「みん就」を「最も活用した就職ナビ」として使った学生は、文系15%、理系19%にとどまる。主な用途が、学生の口コミ情報(就活の進捗状況)を知るためで、それをメインに活用する学生はそんなに多くはないからだ。「みん就」の使い方については、大学ランクで大きな差がある。旧帝大や早慶クラスでは文理とも20〜30%の学生がメインで使っているのに対し、他の大学ランクでは10%台または10%以下になっていた。学校によって就活への感度が異なることが伺える。

もうESには1回入力しておけばいい

学生には「最も活用している就職ナビ」を選んでいる理由について聞いている。「リクナビ」を支持する理由で目立つのは「OpenES」だ。「OpenES」はリクルートキャリアが2013年11月に開始したエントリーシート(ES)作成支援システム。学生は無料で「リクナビ」を使う企業にも追加料金がかからない。

リクルートキャリアのプレスリリースには、「実に8割の学生がESの作成/提出に負担を感じたと回答しています」とあり、この負担を軽減・解消するために開発されたのが「OpenES」だと説明している。どの企業でも聞いている共通の設問を、1回入力しておけばいいので、1社ごとに手書きで記入する必要がない。

「OpenESが利用できて、リクナビにしか載っていない企業数が多かったから」(理系、旧帝大クラス)、「OpenESなど、企業と直接やりとりする機会が多かった」(理系、その他国公立)、「OpenESを採用しており、スムーズなエントリーができるから」(文系、その他私立大学)とある。「OpenES」でエントリーを受け付ける企業も多く、学生にとって欠かせないコンテンツになっている。

マイナビ」を支持する理由で目立つのは、「エントリーや予約のしやすさ」と「企業数の多さ」だ。「掲載数が多くサイトもわかりやすい」(文系、旧帝大クラス)、「企業がたくさん載っている」(理系、上位国公立大)、マイナビでしかエントリーを受け付けない企業が多数」(理系、旧帝大クラス)と評判がいい。

「一番使いやすく、メールも読みやすいため」(文系、早慶クラス)と使いやすさや見やすさを評価する声も多い。

「みん就」は就活戦線の動きをリアルタイムに知るために利用されている。「掲示板の情報を頻繁にみていた。リアルタイムの情報が一番得られたため」(文系、旧帝大クラス)、「掲示板でその企業を志望している人の就活の状況を把握できるから」(理系、旧帝大クラス)、「掲示板をよく利用していました。同じ就活生のリアルな情報が知れてとても役に立ちました!」(文系、早慶クラス)という声があった。

横並び意識の就活生が減っている?


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企業の就職ナビの利用についても見ておこう。学生と同じ2017年6月、企業向けに調査を実施したが、「利用した就職ナビ」を見ると、「マイナビ」が52%(前年54%)、「リクナビ」は47%(前年47%)で、わずかながらマイナビの利用率が高い。3位の「キャリタス就活」は13%で、他サイトは10%以下となっている。

1つの企業が利用する就職ナビの数は、1つが3〜4割で、2つが2〜3割だ。3つ使っている企業は1割未満にすぎない。ほとんどの企業が「リクナビ」か「マイナビ」かを使っており、両者の存在感は大きい。

この種の調査は毎年実施してきたが、今年はより大きな変化を感じる。既存の就職ナビは、掲載社数を増やし、より見やすく使いやすく、よりエントリーしやすいよう、工夫を凝らす方向が垣間見える。

その一方で、「JOBRASS」や「Offer Box」をはじめ、逆求人型の就職ナビの利用が拡大。就活生と企業の動きをリアルタイムで把握できる口コミサイト「みん就」を活用する学生の数も多い。横並びではなく、自主的に判断し、就活しようとする学生が増えているとも言えよう。今後本格化する2019年卒学生の就活で、こうした傾向が顕著になっていくのか、注目していきたい。