日本人の運転モラルは低くなった?社会に優しいドライバーの暗黙のルール

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 東名高速の、故意に妨害して夫婦2人を死亡させてしまった事故には心底憤りを感じる。それでどうしても思い出すのは、古き良き時代の道路事情だ。

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 交通法規とは別に、ドライバー同士がライトを使用して合図を送り、行き来をスムーズにする画期的な方法があった。「暗黙のルール」である。今ではそのルールの通じる人は、わずかしかいないように感じる。それどころか、全体の流れを乱すドライバーが多いのにイライラするほうが多いだろうか。

 現在でも、わき道から本車線に入り割り込ませてもらったときには、「ありがとう」の意味でハザードランプ(非常点滅灯)を付ける光景はよく見かける。しかし他にもたくさんの暗黙のルールがあったのだ。

■右折していいよ

 自分が直進で交差点に入る時、対向車の右折車両がいる場合、ハイビームを一瞬だけフラッシュさせる(パッシング)。「右折していいよ」という合図だ。交差点の先が渋滞している時や、信号が青に変わった瞬間に右折車を先行させてあげる時にする合図である。先日は久しぶりにその合図に遭遇したものだから、慌ててしまったが嬉しかった。

 右折する方としては、なかなかタイミングを合わせるのは難しいから、合図をしてもらうと確信が持てるのだ。ありがたいから、運転者に対し手を上げながら、または会釈をしながら曲がっていく。だだし、死角から出てくるバイクには要注意だ。

■ライトがつけっぱなし、取締がある

 昼間時、対向車に対して「ライトがつけっぱなしだよ」というのをパッシング(ハイビームをフラッシュ)で知らせる。または、自分が来た道のりで警察のスピード違反など取り締まりがあることを、対向車に同様の方法で知らせる合図だ。

 真昼間ライトの付けっぱなしも恥ずかしいから嬉しいのだが、スピードを出し過ぎているときはありがたいと思う。ちなみにクルマの常時昼間点灯(デイライト)は、事故防止の観点から、これからは義務化されるようだ。恥ずかしいことではなくなる。

■高速道路で追い越したい

 最近では、スピードが遅いのに追越し車線をずっと走っている車によく遭遇する。交通違反取締の中でも、スピード違反、シートベルト違反の次に多い違反(通行帯違反)となってきているようだ。

 こんな時、パッシング(ハイビームフラッシュ)や右ウィンカーを出しっぱなしにして「追い越しさせてくれ」と合図を出すのだ。昔はだいたいすぐに気が付いてくれて、左車線に寄ってくれた。しかし現在、この暗黙のルールは通用しないようだ。ネット上でも「なぜなのか?」という記事が多くある。

 実際に使用してみると、本当に意味が分からないらしく、ドライバーが動揺したり、イライラする様子が見える。かえって危険なので、最近ではお蔵入りのルールになってしまった。しかし、追越ししないのに追越し車線を走り続けるのは違反であるから注意してほしいものだ。

■山道で追い越したい、または追い越していいよ

 山道で追い越したいときも、前車にパッシングして合図を送る場合がある。山道の一本道では、低速すぎると後ろが恐ろしく渋滞してしまう。山道に慣れていないドライバーにありがちだ。なので、合図を送られた前車は、(登坂車線がない場合)後続車が抜きやすいように危険のないよう少し左寄りに走行して追い越しさせるのだ。もちろん死角のあるカーブではなく、直線の時にだ。特に、荷の思いトラックの運ちゃんは心得ていて、後続車にパッシングされなくても、タイミングを計って右ウィンカーで「追い越していいよ」と合図してくる。

 逆に、自分が山道を速く走りたくない(走れない)時、「追い越ししていいよ」と後続車に合図するときもある。方法は、スピードを落として左(右)ウィンカーを出しながら走行する。すると後続車は、自分がいいタイミングで追い抜いていく。もちろん、ハザードランプで「ありがとう」である。いや、昔は追い抜きざまに顔を見合わせて、クラクションで「プッ」と挨拶という感じだった。

 こうやって昔のドライバーたちは、自分だけでなく相手の様子も見ながら、阿吽の呼吸でお互いにスムーズに走行できるよう気を遣い合っていたのだ。今でいう皆が「神対応」だったのだ。

 信号で青に変わったとき、発進が遅れると「プッ」とクラクションを鳴らされる時も多々あった。でも、逆切れすることなんかない。「おっとボッとしてた!ゴメン。ありがとう」と後ろに手を上げるくらい余裕があったのだ。しかし、今じゃ「プッ」と鳴らすと逆切れされるかもしれないなんて考えてしまう時代だ。一体全体、日本人のモラルはどうなったのだ? もっと社会に優しくなってほしいものだ。