サウジアラビア 砂漠の中の油田(ロイター・アフロ)

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 サウジアラビアのサルマン国王が来日しました。サウジアラビア国王が来日するのは実に46年ぶりのことで、しかも総勢1000人という大所帯です。この後、中国などアジア各国も歴訪する予定なのですが、同国はなぜこれほどまでにアジア各国を重視しているのでしょうか。

 今回、同国がアジアを訪問している最大の目的は、脱石油経済に向けた協力関係を構築することです。かつてサウジアラビアは世界最大の石油産出国でしたが、米国でシェールガス開発が進んだことから、2014年以降は生産量(日量)トップの座を米国に明け渡しています。米国は石油産出量が増大したことで、理論上、エネルギーを自給することが可能となりました。以前の米国は、石油の確保という観点からサウジアラビアに対して特別待遇を行ってきましたが、生産量の変化などを背景に、最近はサウジアラビアにあまり肩入れしなくなっています。

 こうした状況に拍車をかけているのが原油価格の急落です。原油価格は2014年前半までは1バレル=約100ドルとかなりの高値でしたが、その後、一気に下落。一時は1バレル=約25ドルとピークの4分の1の水準になってしまいました。現在は50ドル前後ですが、この程度までの回復が限界との見方が大勢を占めています。

 サウジアラビアは、国家歳入の約8割を石油に依存しており、原油価格の下落は財政を直撃します。同国は、王族が支配する君主制の国家であり、西側諸国で言うところの基本的人権は存在しません(諸外国との交流も厳しく制限されており、外国人が観光目的で入国することは極めて困難です)。その代わり、税金は存在せず、ガソリンもタダ同然で使えるなど、国民は豊かな生活を保障されていました。

 ところが、原油価格下落による財政逼迫で、同国はとうとう付加価値税の導入を打ち出しました。石油に代わる財源を見つけられなければ、国民の不満が高まる可能性があり、これを回避するためにも、日本や中国との協力関係を強化する必要があるわけです。ソフトバンクと共同で10兆円ファンドを創設したのもこうした流れの一環といえるでしょう。

 日本との間では、自動車分野における相互協力が検討されているほか、省エネ技術や再生可能エネルギーなどの分野でも提携できる可能性があります。

 一方、石油に依存し過ぎた同国の体質を変えることは難しいとの指摘も出ています。石油が有限であることは同国もよく理解しており、経済の脱石油化は30年以上も前から試行錯誤が繰り返されてきました。しかし、これまでのところ、あまりよい成果は上がっていません。王族が支配する絶対君主制の国とはいえ、人口3000万人の国の元首が外国訪問するにあたり1000人の随行員を同伴させるというのは、現代の感覚からすると少々オーバーです。

 当面は国営石油会社であるサウジアラムコの上場がスムーズにいくのかが、同国経済の今後を左右することになりそうです。

(The Capital Tribune Japan)