韓国軍のベトナム慰安所報道で処分、「左遷」 TBS山口敬之ワシントン支局長に激励の声相次ぐ
韓国軍がベトナム戦争中に慰安所を開設していたことを週刊文春でスクープしたTBSの山口敬之ワシントン支局長が、この記事をきっかけに懲戒処分を受け、営業局に異動させられていたことが分かった。
「歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた!」。週刊文春の2015年4月2日号は、こんなタイトルで7ページにわたる大特集を組んだ。
懲戒処分を受け、営業局に異動を命じられる
その記事は、山口敬之支局長名で書かれており、アメリカの機密公文書まで調べた文字通りの調査報道だった。この記事は大きな反響を呼び、ネット上では、なぜTBSでは報じなかったのかも話題になった。
記事によると、山口氏はアメリカに赴任する直前の2013年、ある外交関係者から、慰安所の未確認情報があり、米政府の資料などで裏付けられるかもしれないと耳打ちされた。山口氏は、韓国に加害者の側面があることが分かれば、慰安婦問題の突破口になるはずだとの考えに共感し、この年9月から公文書を探す取材が始まった。
そして、14年7月になって、米軍司令部が「韓国軍による韓国兵専用慰安所」と断定する書簡を見つけた。今度は、当時をよく知る人物がいないかをリサーチし、米海兵隊の歩兵部隊長だった米国人男性(71)から決定的な証言を得た。サイゴン(現ホーチミン市)にその慰安所があり、市内の別の場所には、1区画20人前後のベトナム人女性が働かされていたもっと大きな慰安所もあったというのだ。韓国兵のレイプや性病蔓延などを防ぐのが理由だったというが、二十歳未満の少女も多かったともいう。
記事が載った文春は3月26日に発売されたが、4月24日になって、一部のネットメディアやブログで、山口氏が前日付で懲戒処分を受け、左遷・更迭させられたとの情報が出回った。また、山口氏は、自らの取材結果を報道するよう何度もTBSに求めたが、結局報道しない方向になったとの根拠不明の情報も流れた。
山口氏「寄稿に至る手続きが問題とされた」
夕刊フジが4月26日になって、この情報を大きく取り上げ、ネット上でも騒ぎが大きくなった。
その記事によると、山口敬之氏は、TBSから15日間の出勤停止処分を受け、営業局のローカルタイム営業部への異動を内示された。その理由について、「関係者の間では、取材の成果を他社の媒体に発表したため左遷されたという見方も広がっている」と伝えた。
これに対し、山口氏はフェイスブックで、報道で問い合わせが多かったとして自ら説明した。そこでは、4月23日付でワシントン支局長の任を解かれ、営業局への異動を命じられたのは事実だと認めた。また、懲戒処分もあったとした。その理由としては、「週刊文春への寄稿内容ではなく、寄稿に至る手続きが問題とされました」と明かした。そして、「見解の相違はありますが、今回の懲戒処分がTBSの報道姿勢に直接リンクするものではない」と言っている。
フェイスブックでは、そもそもなぜTBSが報じなかったのかとさらに質問があったが、山口氏は、「会社が私の取材成果を報道しなかった真意は、私にはわからない」と繰り返した。ただ、「事実は揺るぎなく、世に知らしむべきニュースと考えて公表に踏み切りました」と説明している。
韓国の主要メディアはほとんど記事を取り上げていないが、日刊紙「ハンギョレ新聞」だけは、「腹立たしいが、反論は困難...」だとして政府次元の解決努力を促している。山口さんは、その報道を取り上げ、専門家などからも「裏付けが必要」との指摘は出ていないとしており、自らの取材に自信を持っているようだ。
ネット上では、山口氏について、賞賛や激励が相次ぎ、フェイスブックには1日足らずで1100を越える「いいね」が付いたほどだ。TBSに対しては、「この処分自体は当然のこと」と理解する向きも一部であるものの、「報道しない自由っていうやつか」「政府の圧力は散々批判してるのに、自分等がやってる矛盾」といった批判や疑問が続出している。
TBSの広報部では、J-CASTニュースの取材に対し、「人事の詳細については、お答えしておりません」とだけコメントした。