『しのぶ恋 浮世七景』(諸田 玲子) 惚れ惚れするような熟達の筆に酔いしれた。市井を描いた昨今の時代小説は数あれど、『しのぶ恋浮世七景』は特筆すべき一級品である。 説明するまでもないが、諸田玲子は一九九六年にデビュー。「お鳥見女房」シリーズ、「あくじゃれ瓢六」シリーズで人気を博し、二〇〇三年には、短編集『其の一日』で、吉川英治文学新人賞を受賞するなど注目を浴びた。一方で、『奸