格安美容室の「オール11ユーロ」の立て看板。今回入店した店舗とは別のチェーン店です。念のため。
ドイツでも増えている格安美容院。予約を受けず、最低限のサービスを提供することで、低価格を実現しています。近所にも格安美容院のチェーン店がオープンしたのを機に、足を運んでみることにしました。

店外の立て看板の価格リストを見ると、カットが13ユーロから(1ユーロ145円換算で約1,885円)と大きく表示されており、その他、シャンプー、ブロー、カラーリング、メッシュ、保湿パックなどが、それぞれショート、ミドル、ロングヘアごとに細かく表示されています。なかには、「夜会用のアップスタイル 25ユーロから」なんていうメニューも。普段とは別人のようにドレスアップして、コンサートやオペラ鑑賞に出かけることが多いドイツならではです。

いつも通っている個人経営の美容院のカット料金は40ユーロからなので、チェーン店の13ユーロは、ほぼ4回分というお得感。店がすいている時間を狙って早朝に出かけてきたこともあり、待っている客はただ1人。これなら待ち時間も短くてすみます。
先客をカットしていた2名の店員のうち、私の入店に気づいて「おはようございまーす!」と元気に挨拶を返してくれたのは1人でしたが、ドイツ日常生活の中で、店員に無視されることにはすっかり慣れているので、1人から反応があっただけでも上々です。
「番号札を取ってください」という指示に従い、レジ横の番号札を一枚ちぎり取り、ソファに腰掛けて待つこと15分。さきほど挨拶を返してくれた美容師さんが担当になり、ひと安心して鏡の前に座ります。

初入店なので、「どうなさいますか?」との問いかけにも、「毛先をそろえる程度でいいです」と、リスクの少ないリクエスト。どんなに細かく注文を出したとしても、結果的には自分の好みでカットしてしまうドイツの美容師さんに何人も遭遇したがゆえの自衛策でもあり、とことん節約するという目的達成のためでもあります。
「シャンプーはどうしますか?」と聞かれれば「昨晩洗ったので、結構です」。「カットの際、髪をぬらしますか、それとも、乾いたままにしますか?」と聞かれれば「少しぬらしてください」と答えます。乾いたままだと、カット後に細かい髪の毛がぽろぽろ落ちてきそうなので、霧吹きでぬらしてもらうことにします。さすがに霧吹きは無料でした。

毛先をそろえるだけなので、カット自体は10分程度で終了。東洋人と西洋人の髪質談義で盛り上がり、短くも楽しいひとときでした。
仕上げに「ブローはどうしますか?」と聞かれますが、価格表には「ブローは、髪の長さによって5ユーロから。ヘアムース、ジェル、スプレーは別料金」と明記されていたので、節約に徹する今回は、自分でやることを選びました。「それでは、どうぞ!」と手渡されたのは、ずっしり重い業務用ドライヤーとロールブラシ。鏡をのぞきこみながら、何とかスタイリングを試みますが、使い慣れないロールブラシを持て余し、単に髪に風をブンブンあてて乾かしているだけ。あまりの不器用さを見かねたのか、担当の美容師さんが、ブラシの動かし方や、温風の当て方まで懇切丁寧に指導してくれる羽目に。周りのお客さんも、こちらをじっと注視して解説に聞き入っていたため、なんだか気恥ずかしい時間が流れます。

即席指導してもらった方法でブローを終え、席を立とうとしたところ、すでに次のお客さんのシャンプーを始めていた担当美容師さんが戻ってきて、不ぞろいの前髪を丁寧にカットしてくれて、本日は終わり。
レジでの支払いも予定通りの最低料金13ユーロ(別途美容師さんへのチップも)。平均的なカットの仕上がりと、カットに費やした10分という短時間を考慮すると、価格は妥当という感想。しかしながら、ブローのノウハウも教えてもらえましたし、節約に徹した満足感に浸りながら、店を後にしました。
(柴山香)