『アメリカの鳥』(雄松堂書店デラックスファクシミリ版)の大きさは縦1メートル、横68センチメートル!

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この金額を見たら、誰もが「え?」と思うはず。
全4巻セット¥4,536,000(税込)
まず、「4巻ってことは……この値段で本なの?」と思うし、「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……よ、四百万?」と数えてしまった人もいるだろう。

このあまりに規格外な価格の本は、2014年10月に発売になった『アメリカの鳥』(雄松堂書店デラックスファクシミリ版)。ちなみにファクシミリ版とは、オリジナルを忠実に再現した「複製本」のことで、決してFAXでウィ〜ンと送られてくるわけではない。

では何がデラックスなのかというと、そのサイズ。この本、縦が1メートル、横が68センチメートルという超大判で、そこにはタイトル通りアメリカの鳥たちがデカデカと描かれているそうなのだ。

これは現物を一度見てみたい……と思い、発売元の雄松堂書店を訪問。制作・販促を担当しているサブジェクト営業部 国際事業室の松野夏生さんに話を伺った。

そもそも『アメリカの鳥』とはどんな本なのだろうか。調べたところだと、ジョン・ジェームズ・オーデュボンという人の19世紀の作品で、収められた図版は435点。ペリー来航時には日本政府にも寄贈されたそうだが……。

「オーデュボンは1785年にハイチで生まれ、画家、科学者、自然愛好家として知られる人物です。『アメリカの鳥』は、彼がアメリカに渡った後で描きためられた北米の鳥の水彩画の作品をもとに、1827年から11年間かけて彩色版画で出版されました。その大きさは当時でも異例で、実物大の鳥たちが自然の中でいきいきと躍動する姿を描いたことも画期的でした」

そして現物を見せてもらうと……実際に見てもやっぱりデカい!

そしてページを開くと、大きな鳥は紙面いっぱいに大きく、小さな鳥は中央にこじんまりと描かれているのが何だか愛らしい……鳥がヘビと戦うようなシーンも満点の躍動感で、且つ羽やくちばし、爪といった細部まで精密に描かれていて、色合いも含めてとても美しい。

「本書は過去にもオランダとアメリカで2回、原寸の複製が出版されていますが、デジタル画像処理を施したものは今回が初めてです。8000万画素のデジタルカメラで原書を撮影し、用紙も当時の紙に近い風合いを目指すため、特別に製造してもらいました。空気をよく含むしなやかな紙に、インクをたっぷり用いて印刷しているので、実際に絵の具で描いたような質感に見えると思います」

なお本書は100セットの限定受注出版で、製本版のほか未製本版(345万6000円 税込)もあり。すでに日本では11セットの予約注文が入っており、大学などの研究機関のほか、個人の購入者もいるそうだ。

400万、300万という金額を聞くと高いように思えるが、世界に120セットしか残っていない原書はさらに高価で、「状態のいいものは過去に9億円で取引されたこともあった」なんて話も。そう聞くと今回の値段が安く思えてくるから不思議……。

「貴重な古書は財産的な価値も生まれるものなんです。『アメリカの鳥』はファクシミリ版への期待も高く、『今度はどこが作るのか』と世界から注目を集めていました。なお弊社は、洋古書の輸入や貴重書の復刻も以前から行っており、今回の原書として使用した明星大学所蔵の『アメリカの鳥』も、25年以上前に弊社を通して販売させていただいたものです。そのようなご縁と、ペリー来航160周年という時期もあり、このタイミングで復刻をすることを決めた作品でした」

また「紙の本ならではの良さも伝えたい」という思いもあるという。

「今は検索をすればたいていの事は分かる時代ですが、昔の本は今よりも貴重で宝物のような存在でした。紙の本には、手触りや装丁を含めたモノとしての存在感がありますし、貴重な学術書や聖書などの残された原書では、シミや破れまで価値の一部として認識され、その部分まで正確に再現したファクシミリ版も発売されています。『現物はひとつしかないけど手元においておきたい』という方は今も多いですし、本という形にして作品を残し、“昔はこのような素晴らしい本が存在した”と伝えることには意義はあると思っています」
(古澤誠一郎)