「ルイ・ヴィトン・ファウンデーション」世界が注目する、その魅力は

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パリにルイ・ヴィトン・ファウンデーションが開館した。同館はルイ・ヴィトンやモエ・エ・シャンドンなどを傘下に収めるLVMHグループが設立した現代アート施設で、カナダ人建築家フランク・ゲーリー設計の元、10年以上の年月をかけて作られた。今、パリ市内ではピカソ美術館が5年ぶりにリニューアルオープンするなど、アートイベントが相次いでいる。そのなかでも特に注目を集める同施設の魅力はどこか。現地を訪れた。

パリ西部に広がるブローニュの森。そこにある、膨らみ複雑に組み合わさる帆のような巨大ガラス構造に、誰しも圧倒されるだろう。ルイ・ヴィトン・ファウンデーションの入口では、銀に輝く「LV」の文字が迎えてくれた。

白を基調としたエントランスホールへ入る。建物の構造は地下1階、地上4階。中央左手にはブックショップが、奥にはレストラン「ル・フランク」が入り、それらに挟まれた間にギャラリーへの入口がある。ギャラリー入口から先へ進もう。軸となるのは、各階をつなぐ長いエスカレーターだ。地階へ下ると、デンマーク生まれのアイスランド人、オラファー・エリアソンのインスタレーションが目に飛び込んでくる。黒い縁取りに、黄色く光る柱が連なった回廊は、そばをグロットのように水が張られ、水面に作品と光が反射して、インスタレーションが施設と一体化していた。

エリアソンの水面を抜けると、米国人画家エルズワース・ケリーの作品をいただくオーディトリウムに出た。白地に正方形の巨大なグラデーションが、鏡板に取り付けた舞台は、建物自体がガラス張りであるため、外の明るさを十分に取り込んでいる。そのため夜には別の顔を見せるのだろう。

舞台の客席側を登ると、再び地上階に戻る。同階ギャラリー4では、現在フランク・ゲーリーのエクスポジションが開かれている。計画時に作られた建築模型が集められ、構想初期の素描に始まり、彼が具現化しようとしたイメージが展示されている。そこは、まさにフランク・ゲーリーの頭の中に入ったかのような感覚で、次から次へと変遷する構想過程のデザイン群を見渡すと、同館の設計がどれだけ多くの試行錯誤を重ね、類稀な結論へ行き着いたか、その片鱗に触れられる。

残念ながら11月26日から12月17日までは、インターエクスポジション期間のため、大半のギャラリーは閉じられているものの、上階西テラスにはアルゼンチン人アドリアン・ビジャール・ロハスの作品が鎮座する。人工物と自然物を何層にも積み重ねた彼の作品は、無機質な施設内で、緩衝材として落ち着きを放つ。その他にも、テラス各所には植物が植えられ、巨大な現代建築にアクセントを付けている。上へ登るほど緑に近くなり、屋上からはあふれんばかりのブローニュの緑が目に飛び込んでくる。

テラス全体は屋根や館内同様、幾重にも重なった構造だ。そこからは一方に、パリ市内とその向こうに高層ビル立ち並ぶラ・デファンスのビジネス地区を、もう一方には広大に広がるブローニュの森を眺められ、その対比が興味深い。

エレベーターで地上階へ一気に下る。ブックショップではルイ・ヴィトンが発行する世界各地のシティ・ガイドや、アート関係の書籍が並び、ノートやペン、エコバッグなど同館独自のグッズもそろう。レストラン「ル・フランク」も忘れてはならない。市内16区「レ・タブレット」のオーナーであり、ミシュラン1つ星を獲得しているシェフ、ジャン・ルイ・ノミコスがプロデュースした料理が、各国の来客を歓迎する。昼のレストランは、一面ガラス張りとなった窓から十分な陽の光が差し込み、夜は外の暗闇に対して、天井からつるされた無数の魚のオブジェが、やわらなか光で食事客を包み込む。

各階でさまざまな表情を見せるルイ・ヴィトン・ファウンデーション。人々は新たな表現に触れ、それぞれの思いを持ちながら、頭の中で咀嚼する。ここはブローニュの森の光をその帆で取り込み呼吸して、我々にいくつも表情を見せる巨大なアート・コングロマリットなのだ。
(加藤亨延)