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全世界で200種以上あるという風邪ウイルスが撲滅可能な奇跡の特効薬をめぐる利権争いに巻き込まれていく、1人の女性の姿を描くサスペンス・ムービー『風邪(ふうじゃ)』が公開に。先が読めない展開という様々な“顔”で観る者を翻弄する今作だが、「一貫して強い母性が通っているストーリーに惹かれました」と言う主演の小西真奈美に話を聞いた。

――先がまったく読めない、ハラハラし通しでしたが、この映画についてはどんな印象でした?

「とても斬新な印象でした。大まかなテーマ自体は風邪についてのシンプルなものなんですけど、一人の女性が息子のために翻弄されていくストーリーでもあって、読み進めていくうちに映像化への期待が高まって面白かったですね。様々なジャンル性の印象を受けますが、私としては一貫して母性が通っている母の物語だと思って。そこに惹かれましたね」



――確かにヒロインの桜子はスナックのママで一児の母、最終的には組織のスパイと謎が多いですが、彼女の行動原理とモチベーションは一点だけと理解してもいい?

「彼女がやっていることのモチベーションは、愛情しかないと思います。事件に巻き込まれ、ていって、悪いことにも手を染めてしまうけれど、その方向性だけですよね。最初は、いろいろなことをやり出す彼女を見て、シーンごとに演じ分けていく必要があるのかなとも思いましたが、最終的には彼女のやっていることは母性でしかないなって。息子を救いたい一心なので、そこはブレないように心がけて。女性として共感できる人だと思いましたね」

――桜子はタフな女性だと思いますが、仮に自分も同環境にと想像した場合、いかがですか?

「客観的に観ていてもどかしかったですね。もうちょっと違うやり方もあるでしょうに、って思っちゃいました。私には子どもがいないし、女優という仕事を都内でしていて選択肢も情報も多いので、そう思うのかもしれないんですけど、でも、田舎でスナックのママをして、子育てもしていて、その子が病気になってという状況下になると、日々の出来事でいっぱいで盲目状態になるかもなって。桜子の不器用な加減がもどかしいけれど、愛おしいとも思いましたね」



――難しい設定のヒロインだと思いましたが、世の中にいなくもないリアリズムを感じた理由には、小西さんの演技力にも起因すると思います。演技では、何を心がけていますか?

「信じきること、ですね。そもそも演じている側があり得ないと思ってしまっては、まったく伝わらない。映画は虚構の世界なわけで、納得していただかなくても何かを感じていただければ合格なのかなって思います。でも、何かを感じていただくためには、自分が引いて批評してしまうと何も感じない。それって頭は使うけれど、気持ちが動かないですよね。やっているほうが『ない』と思うと、それが伝わってしまうから、観ている人の感情を揺さぶるためには、信じきることで伝わると信じています。それは意識していることですね」



――その意味では今回は、女性の母性が観ている人に届く作品になりましたね。

「個人的な意見ですが、やっぱり女性って強いなあって率直に思いました(笑)。最終的に母親は我が子のために何でもすると耳にしますが、こういうことなのかなって思いましたね。桜子は自分の人生を何一つ謳歌していないような気がして、趣味もなく自分の時間もなく、やりたい仕事でもない。おしゃれをするわけでもなく、とにかく子供のために闘いますよね。でも、そのエネルギーがすごいので、観ている方々にも届くと願っています」

映画『風邪(ふうじゃ)』は、9月27日より全国公開中!

© 2013『風邪』製作委員会

取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)