本田圭佑が今季、ミランの主役になる可能性
オフィシャル誌編集長のミラン便り14〜15(1)
あと数日で開幕する2014〜15シーズンは、本田圭佑のイタリアでの本当の1年目になると言ってもいいだろう。
少し前(23日)、ミランはTIMカップを戦った。毎夏恒例の、3チーム総当りのプレシーズンマッチで、今年はミラン、ユベントス、サッスォーロの間で行なわれた。1試合は45分で、本田は2試合に出場し、90分間フルにプレイした。
対ユベントス戦ではゴールを決め、サッスォーロ戦ではエル・シャーラウィーにアシストしてミランの2ゴール目をマークした。この2試合ともで本田の出来は非常に良く、チームの勝利に大きく貢献、その豊かな才能を垣間見せた。大活躍の本田はこの大会のMVPに選出された。授賞式で、本田はいつも通りのポーカーフェイスでクールさを装っていたが、その顔は(たぶん彼の意に反して)喜びと誇りに満ちていた。この表情を見ながら私は思った。本田の新シーズンの物語はここからスタートするのが正しい、と――。
失望のほうが多かったブラジルW杯の後、短いバカンスを経て、本田はフィリッポ・インザーギが率いる新生ミランに合流した。合流してまずはすぐにミラノを遠く離れてのアメリカでのトーナメントに参加。この大会で残念ながらミランは1勝もあげることはできなかったが、本田は常に大いなる闘志と、相変わらずのプロ意識を持って臨み、すぐに新監督の信頼を得た。
最初の数日の練習で、インザーギは本田の才能を確信し、3トップの右で使うと公言している。本田もそれに応えるかのように、コンディションを取り戻すやいなや、多くのゴールをあげ始めた。
メキシコのチーバス戦で先制ゴールをアシスト、いいパフォーマンスを見せたのに続いて、バレンシア戦ではフリーキックからゴールを決め(この試合、本田は 90分プレイした数少ない選手だった)、そして冒頭にあげた先日のTIMカップである。運命の女神のちょっとしたいたずらなのか、本田がMVPとなったの は、今年の1月12日に彼がセリエAデビューを果たし、アッレグリ元監督が解任されたのと同じ、レッジョ・エミリアのスタジアムだった。
試合後、インザーギは本田に関してこう語っている。
「本田がいいプレイをしたのはなにも今日が初めてではない。確かにシーズン冒頭から、ミランで準備できたことは彼を大いに助けているだろうが、私はこれまでも 彼の才能を疑ったことは一度もなかった。昨シーズンはイタリアサッカーに慣れるための必要な期間で、それは外国人選手ならごく当たり前のことだ。またポジ ションに関しては、右サイドが彼本来の、一番力を発揮できるポジションだと私は信じている」
またミランの副会長ガッリアーニもこう言っている。
「本田に心から賞賛を贈る。今夜の本田はまさにMVPにふさわしいプレイヤーだった。ベルルスコーニ会長ともそう話したよ。今晩のゴールも、この前のバレンシ ア戦のゴールも本当に見ごたえのある素晴らしいものだった。ザッケローニも彼についてはいつも良く言っている。この調子でいけば、またすぐに以前のような 偉大な選手に戻るだろう」
さて、開幕も間もなくだが、カルチョメルカートも最終段階に入った。9月1日の23時にはすべての移籍市場が閉 まる。ミランは今、リバプールに移籍したマリオ・バロテッリに代わるビッグネームのストライカーを探している。しかし、もしかしたら新たに大金を積んで大 物を獲らずとも、すでに自分たちの手の中にある本田が、ミランの新シーズンの主役になるかもしれない。その可能性は大いにある。
イタリアの8月30日にセリエAは開幕、ミランは日曜日にラツィオと対戦する。ミラニスタたちは本田がミランの背番号10の正当な後継者であることを、ついに見ることができるのではないだろうか。
ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko