Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン(セルゲイ・ブリン)氏が、ベンチャーキャピタルのKhosla Ventures主催のイベントで40分にもおよぶロングインタビューに応じました。両者はインタビューでページランクや今後の展望、自動運転カーなど、さまざまなことについて答えています。

Fireside chat with Google co-founders, Larry Page and Sergey Brin with Vinod Khosla - YouTube

インタビューの様子はYouTubeで全編配信されており、Khosla Venturesのサイト上では文字起こしされたものを読むことができます。

Fireside chat with Google co-founders, Larry Page and Sergey Brin | Khosla Ventures

http://www.khoslaventures.com/fireside-chat-with-google-co-founders-larry-page-and-sergey-brin

◆ページランク

話は、Googleがウェブページの重要度を決めるために使用しているアルゴリズム「ページランク」のことからスタート。ブリン氏によると、ページランクは当時検索サービスを手がけていた多くの企業から注目され、InfoseekExciteLycosから買収話があったそうです。



中でも強く交渉してきたのが、今回のインタビュアーでもあるヴィノッド・コスラ氏が創業したExcite。当時のミーティングにはペイジ氏・ブリン氏・コスラ氏と他のExcite社員が参加し、ページランクに対して160万ドル(当時のレートで約1億6000万円)の値がつけられましたが、結局この交渉は成立しませんでした。



ペイジ氏は「学生だった僕たちにとって、100万ドル(約1億円)でも売れたら申し分ないと思っていました。でも、実際は『売らない』という決断を下したんです。理由は、買収しようとした企業はページランクではなく僕たちを欲しがったからです。僕たちは『検索エンジンの可能性を信じていない企業で働いてどうなるのか?何もいいことはないのでは?』と思ったんですね。検索エンジンを使えばさまざまなことが可能になると考えていた僕たちにとって、『検索』は非常に重要なことでしたから」と売却しなかった理由を語っていました。

◆Googleが重要視するファクター

ページランクの買収から、話はGoogleの未来について移っていきます。コスラ氏は「Googleという企業がどこに向かっているかをもう少し話してくれますか?次の15年で、Googleにとって最も重要なファクターは何になるんでしょう?」と質問。

コスラ氏の質問に対してブリン氏は「もし、いくつかのファクターを重要視していたら、企業はすぐに脆弱になってしまう。幅広い分野で役立つテクノロジーは多く開発されており、それに伴うビジネスも多数存在します。我々はGoogleにフィットするであろうと思った企業やプロジェクトに出資しているんです。ただし、そういった企業がごまんと存在する中で、利益を生み出してくれるのはごくわずか。Google Xを率いている私の仕事は大きく飛躍する可能性を秘めたプロジェクトや企業に出資すること。例えば、Google Xには自動運転カーがありますが、まだ成功するかどうかわからない大きな賭けの1つです」と、Googleが1つの分野に縛られずに、多くの分野に進出する可能性を示唆していました。



一方、ペイジ氏は「今後の何年かで最も大切なのはAndroidですね。人々がGoogleに対して抱いているのは『Googleは一体何をしているの?』ということ。我々が行っていることは、世界で何が起こっているか理解して、それを人々のために組織化しているんです。例えば、Google Nowを考えて下さい。ユーザーは質問する前に答えが欲しいんです。質問するという行動を望んでいないんですよ。Googleで検索すると、検索ボタンの横に『I'm Feeling Lucky』と出てきますが、あれは実は『検索結果をスキップしてすぐさま答えを用意する』ボタンになる予定だったんです。ただし、名前がよくなかったこともあってうまくいきませんでした」と語りました。



ペイジ氏は続けて「我々は、いまだにコンピューターの性能がよくないと思っています。みなさんスマートフォンの画面をタッチしてスクロールして欲しい情報を探しますよね。もし、あなたが自動車に乗っていたら、危険でそんなことはできません。私は、コンピュータから得られる情報と、情報を得るのにかかる時間が釣り合っていないと思うんです。だから、コンピューターはまだまだダメなんですよ。我々の目標は、こういった問題を完全に解決することです」と、Googleが今後について言及

◆オートメーション(自動化)

ここから話題は機械化へ、いわゆるロボットの話へと続きます。「作業が機械化されたり、自動化されたり、ロボットが導入されたりすることによって、どんどん人々の仕事が減っていきそうな気配がしますよね。1900年から2000年にかけて農業人口が激減したときと同じことが10年、20年後には起こり始めるように思えるのですが」と持論を展開するコスラ氏。

コスラ氏の意見に対してペイジ氏は「私は人間が有り余るほどの時間の中でゆっくりと暮らすべきだと思います。人々のニーズを満たすために誰しもが己を捨ててまで忙しく働かなければいけない、という考え方は間違っています。問題なのは、人々がそういったことを間違いであると認識できていないところにあるんです。また、人間は何もすることがなくなったら幸せじゃなくなってしまうと思っていることも問題です」と人々の労働に対する認識に対して語ります。



By Cactus

ペイジ氏は労働から雇用問題へと話を展開。「我々は人々に何かすることを与える必要があります。人々は必要とされ、求められ、何か生産性のあることをしていると感じられるようにならなけばいけない。しかしながら、そういった人間と工業や産業が交わると、環境破壊といった問題が起きてしまうんですね。だからこそ、私は現在の世界が心配なんです。世界中で雇用問題が取り上げられ、特に若年層の失業率が問題となっています。働きたいけども仕事が不足していると。それを解決するには、1人1人が仕事をする時間を減らすこと、つまり労働時間の短縮が必要です。私が社員に『1週間の特別休暇を欲しいですか?』と聞いて、手を挙げない社員はいないでしょう。多くの人は労働を必要としているけれども、家族や趣味に費やす時間も必要なんです」と語るペイジ氏。



◆自動運転カー

少し話が壮大になってきたところでコスラ氏がGoogleの話へと戻していき、インタビューは再び自動運転カーの話へ。

「自動運転カーは社会にどのような影響を与えるのか?」と聞かれたブリン氏は「自動運転カーが最も影響を与えるのは、ライフスタイルや土地利用といった分野だと思います。都市におけるほとんどの土地は駐車場に使用されいて、とてつもない無駄を生み出しています。道路も土地のスペースの多くを使っていて、あまりいい状況とは言えません。自動運転カーは、必要な時に利用するという自動車スタイルを提供するので、1人1台自動車を所有することがなくなり、結果的に駐車スペースは多くを必要としなくなるわけです」と回答しました。



By Saad Faruque

◆大企業のあるべき姿

次は、「幅広い分野の事業を手がけるGoogleにおいて、何を基準に力を入れる事業を決めているのか」というトピックでインタビューが進行。

ペイジ氏は「とてつもなく大きな企業が5つの事業しか運営していなかったら、もったいないと思いますし、従業員にもいい影響を与えないでしょう。3万人の社員全員が同じことをしていたら、社員は仕事から刺激を得られません。スティーブ・ジョブズ氏が私に一度『Googleは多くのことをやり過ぎですよ』と言ってきたことがあります。私は『その通りですね』と答えました。ジョブズ氏は、ある意味正しいことを言っていると思います。けれども、私の考えは違います。密接に絡み合った問題を各部署が解決するのには限界があり、結局のところ、そういった問題はCEOのところに上がってきます。本来であれば、そういった問題はCEOに届くまでに解決されるべきなんです」とジョブズ氏との会話を挟みながら大企業の組織について意見を展開します。

さらに、「例えば、私は自動運転カーについてブリン氏に聞くことはありません。ブリン氏と話すのは好きですけど、私が自動運転カーについて聞いても、他の事業に何の影響も及ばさないからです。マップ事業も同様で、独自に開発を進めています。大きな事業を1つだけ運営するよりも、関連性のない多数の事業を展開する方がかかるコストは低くなるんですね。もちろん、スタートアップのように展開できる事業が限られている場合には当てはまりません。まあ、自動運転カーとマップ事業は多少関連性はあるんですけども」とペイジ氏は続けて、大企業のあるべき姿について独自の見解を述べました。



◆ヘルス事業

ペイジ氏が話した大企業の話からコスラ氏はGoogleが最近進出しているヘルス事業に話を展開。

ヘルス事業についてはブリン氏が「ヘルス事業は検索事業より大きくなる可能性を秘めています。Google Xでは血糖値を読み取れるコンタクトレンズを開発しました。ただし、ヘルス事業は規制が厳しすぎるという問題があり、アメリカの多くの企業は厳しい規制が原因でヘルス分野への参入に踏み切れないんです」と現在抱えている問題を指摘しました。



インタビューは、最後にペイジ氏が自身のキャリアについて振り返り、「自分のようにCEOを一度退任してからもう一度CEOに復帰するというキャリアは他の人に当てはめることはできないけれども、経営者が20年以上企業を継続できたなら、それは成功と呼べるのではないか」とまとめました。