入社して早々“この会社と合わない…”と思ったら

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 この春、学校を卒業して新社会人となった皆さん、おめでとうございます。
 早速水を差すようですが、働き始めるということは、自由な学生生活から、社会人一年生として世の厳しさを身をもって知る、人生の節目となります。
 そしてどんな職業に就く人でも、遅かれ早かれ「自分はこのまま働いていて大丈夫なのだろうか」と悩む日が来るでしょう。

 仕事でトラブルに遭ったとき、望まない配属先に回されてしまったとき、「お給料はガマン料」と考え、仕事とプライベートを完全に切り離すことが出来るのならいいのですが、全員がそう割り切れる訳ではありません。仕事へのやる気が低下してしまった時に、自分で仕事へのモチベーションを調整できる能力というのは、働く環境の厳しさが増している現代だからこそ、ますます重要となっています。
 『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(金井壽宏/著、日本実業出版社/刊)は、大学で経営学を教える著者が若い世代にインタビューを行い、働く20代のモチベーションについて書いた一冊です。

■望まない配属先についてしまったら
 クリエイティブな仕事や人間としての成長を夢見て社会に出たのに、いざ就職すると単調なルーティーンワークや泥臭い営業に配属されてしまった。望む配属先に行けず、「仕事にやる気が持てない」ということは、最初の壁として立ちはだかりがちです。嫌な仕事でガマンし続けていても報われないのでは、と考えて早々に職場を変えてしまう20代も増えています。
 しかし、その仕事の面白さ・やりがいを知るための最低限の努力を投入する前に「この仕事は自分には合わない」と決めつけてしまうのは、悪い逃げグセをつけてしまう可能性があります。例えばピアノでも、楽譜が読め、最低限の練習がこなせなければ、その世界の入口に立ったとも言えません。それは仕事も同じ。最低限、その仕事がなぜ社会に存在しているのか、どういう顧客がいて、現場で自分が果たしている役割は何なのか。それを理解するまでは辞めるべきではない、と著者はいいます。
 若いビジネスパーソンにとっては、せっかく入ることのできた会社を辞めることは大きなリスクを伴います。たとえ仕事で失敗しても、「自分に向いてない」などと考えることはありません。まずは「この仕事でやれることはやってみた」と燃焼し尽くさずに辞めてしまうのは、もったいないことです。

■どうしても企業と合わない、と感じたら
 企業の中で自分の意見が通らないとき、希望が叶わないときには、仕事は自分ひとりで出来るものではないからこそ、諦めずに上司や同僚に訴えることも大切です。そしてその訴えが認められない、どうしても状況を変えられないとなった場合には、その場から離れることを検討する必要も出てきます。
 経済学者のアルバート・O・ハーシュマンは、著書の中で、組織の中の離脱・発言・忠誠について述べています。
 働く場に問題がある場合は、ただ単にその場に「忠誠」心を持って黙って勤務を続けるだけでなく、労働者が「発言」をして組織の改革をするのが「発言」のメカニズムであり、それでも動かない場合は、自分にとってよりよい職場を求めて「離脱」することが必要である、ということです。発言と離脱が双方ともに健全に機能しているとき、雇用側と労働者の意見のすり合わせが上手くいき、その組織は良好なパフォーマンスを発揮するといいます。万が一、自分のいる組織が「発言」と「離脱」の機能を備えていない場合には、その組織自体に問題がある可能性もあります。
 どうしても会社の価値観と自分の価値観のすり合わせができない、と感じる人は、モヤモヤと渦巻いている仕事への不満を、ロジカルな形で他人に説明するのもよいでしょう。自分の価値観と仕事の何が対立しているのか明確にしていくことは、ストレスの軽減にもなり、自分のキャリアを考える上でも役に立ちます。

 20代では、自分の行った選択が取り返しのきかないことだと思い込んで、仕事について必要以上に悩んでしまうこともあります。望まない仕事内容や異動があっても、長い目で見ればそれがのちのち自らの糧となることもあります。
 将来、「あの経験があったから今がある」と言えるキャリアを積むには、仕事を深く理解し、積極的に関わることが一番重要なことになるのでしょう。
(新刊JP編集部)