太りやすい要因の一つは“腸内”にあった?

写真拡大

 運動をしたり、食事に気をつけたりと、健康に気を使っているという人は多いだろう。
 心身ともに状態良く、生活習慣病などにかからないためにも注目すべきものが「腸」だ。腸内環境を決定づけている腸内細菌の研究も盛んに行われ、1990年代には世界で年間100前後だった論文が、ここ2、3年は年間1200以上も発表されている。
 このことからもわかるように、健康的な生活を送るためには「腸」の状態が重要だといえるのだ。

 『腸をダマせば身体はよくなる』(辨野義己/著、SBクリエイティブ/刊)では、“うんち博士”として腸や便の研究で知られる辨野義己氏が、正しい腸内環境の改善を行い、健康的な生活をおくる方法として、腸内細菌のバランスの整え方や腸内細菌がよろこぶ生活習慣、がんやインフルエンザ、花粉症、老化、うつ病などの予防法、腸の常識・非常識について解説する。

 「大腸はあらゆる病気の発生源」といわれるほど、大腸は人間の臓器のなかで病気の種類が多いが、病気だけではなく、肥満にも影響を及ぼしている。
 2006年、イギリスの科学雑誌『ネイチャー』に掲載された「肥満に付随してみられるエネルギー回収能力の高い腸内細菌」という論文で、腸内細菌が肥満に関係していることが発表された。肥満は、癌、脳疾患、心臓疾患の三大疾病をはじめとした生活習慣病の引き金になるものなので、太らないように気を付けている人も多いだろう。
 人間の腸内細菌の約90%は、バクテロイデス類かファーミキューテス類のどちらかに属している。この論文を発表した研究チームが、肥満の人とやせている人の腸内細菌の構成を調査したところ、肥満の人はやせている人よりもファーミキューテス類が多く、バクテロイデス類が少ないことがわかったのだ。また、肥満の人を食事制限によって減量させたところ、ファーミキューテス類の腸内細菌が減少し、バクテロイデス類の腸内細菌が増加したことがわかった。この研究チームは、ファーミキューテス類の細菌が増加し、バクテロイデス類の細菌が減少すると、食事からのエネルギー回収率が高くなると推測している。同じ食事を摂っても、エネルギー回収率が高い腸内細菌、ファーミキューテス類をバクテロイデス類よりも多く持つ人の方が。肥満が促進されるというわけだ。
 つまり、肥満型の腸内細菌がファーミキューテス類、やせ型の腸内細菌がバクテロイデス類となる。このような理由から、大食いなのにやせている、普通の人と同じ食事を摂ると太ってしまうという差がでるのだろう。

 「肥満が腸内細菌によって左右されるのだとしたら、近い将来、魔法のようなやせる薬が誕生し、生活習慣病の予防に大きく貢献することは間違いありません」と、辨野氏は語る。これからも研究が進み、腸内環境を決定づける腸内細菌について、いろいろと解明されていくことになるはずだ。
 腸内細菌が肥満に関係しているというのは新しい見方だが、病気に影響の大きい腸内環境をいい状態に保つことが健康的な生活をおくることにつながるのだろう。
(新刊JP編集部)