結局「iPhone」は出る? 出ない? ドコモ社長の発言にメディアも揺れる
NTTドコモの加藤薫社長が主要メディアのインタビューに応じ、2013年7月4日に一斉に記事が配信された。事業の現状や戦略を語っているが、今も販売が実現していない米アップルの「アイフォーン(iPhone)」の今後について報道がぶれている。
「iPhone販売か」と期待させる見出しもあれば、「判断できず」と見込みが薄そうな記事も見られる。うわさが浮上しては消える「ドコモiPhone」。結局どうなるのか、展望が見えないまま消費者はまたもやきもきさせられるのか。
アップルとの具体的な交渉は進んでいない
読売新聞朝刊は、「ドコモ iPhone交渉中」との見出しで加藤社長のインタビューを掲載した。ドコモにとってiPhoneが全販売台数の2〜3割なら許容できるとする一方「アップルが納得するかどうか分からない」と述べた。条件さえ合えば手を組むというスタンスは従来と変わらず、それほど驚きはない。だが同紙電子版では、見出しが「ドコモ、iPhone販売か」と一歩踏み込んでいる。
同じく加藤社長に話を聞いたNHKの報じ方はまるで違う。アップル側が高い販売目標を求めてくることが「課題」で、ドコモの「2〜3割なら」と折り合わないようだ。結局「いつ結論を出すか目標はもっていない」との言葉を引用し、「現段階では導入を判断できないという考え」を示したと否定的に伝えた。iPhoneの販売比率は以前から交渉上の大きなハードルとして取りざたされている。乗り越えられなければ契約成立はありえないのだろう。
ロイター通信は加藤社長が「何も決まっていない」と従来の見解を繰り返したとしたうえで「社内にもいろいろな声がある」と、発売を断念していない様子をにおわせる。米ブルームバーグは「魅力的な端末」と評価しつつも、「アップルとの具体的な交渉については否定した」と報じている。どうやら目立った進展は何もなく、妥結を目指して真剣に交渉しているのかも疑わしく映る。
多くの消費者が「ドコモからiPhone」を期待しては裏切られ、今では待ちくたびれたかもしれない。2011年12月1日、日経ビジネス電子版が「ドコモ、来年夏にiPhone参入」とぶちあげた。当時の山田隆持社長らがアップルのティム・クック最高経営責任者と会談して基本合意にこぎつけ、「販売数量などの条件について本格的な交渉を開始した」と伝えたのだ。これは結局「幻のスクープ」に終わる。以後もドコモ社長が取材されるたびに「iPhoneはどうなる」が問われ、「今度こそ」と利用者の期待が膨らんではしぼむ、を繰り返してきた。
「ツートップ」に選ばれなかった他社スマホと格差歴然
加藤社長のインタビューでは、ドコモが掲げる「ツートップ戦略」も話題に上ったが、これも各社見解が分かれた。毎日新聞朝刊では「『ツートップ』戦略が奏功し、想定以上の売れ行きとなっている」と高く評価した。加藤社長は、優遇した2機種のうちソニー・モバイルコミュニケーションズの「エクスペリアA」が2013年6月末までの販売台数が83万台、韓国サムスン電子の「ギャラクシーS4」が40万台と明かしている。ブルームバーグも、戦略は「好調」と位置づけた。
これに対してフジサンケイビジネスアイ電子版では、他機種との販売台数に極端な差が開いたことから「『ツートップ』戦略で明暗クッキリ」とした。同時期に発売したシャープや富士通のスマートフォン(スマホ)は7万台にとどまり、1万台程度の製品もある。2機種との格差は歴然だ。またロイター通信は、加藤社長が、「機種変更の増加で端末販売は伸びているものの、他社との顧客獲得競争の面では『即効果は出てこない状況』と述べた」点を紹介している。「ガラケー」と呼ばれる従来型携帯電話の契約者をスマホに乗り換えてもらううえでは功を奏しているが、「番号持ち運び制度(MNP)」で他社から顧客を奪うまでには至っていないのだ。
ドコモが2013年6月7日に発表した、5月末時点の携帯電話契約数は、新規契約から解約を差し引いた純増数が9万1800件。一時の「純減」からは脱却したが、携帯電話会社のなかでは3番手という構図は変わっていない。MNPも13万5800件の転出超過と「独り負け」が続いた。
ツートップ戦略を始めてから2か月程度しか経過していないため、各メディアにとっては現時点で結論を出すのは早すぎる。二分した評価がどちらに転ぶかで、ドコモのスマホ戦略が大きく変わるかもしれない。