2012年には、京都サンガF.C.から当時まだ高校生だった久保裕也が代表に招集されている。代表ではないが、中村充孝が鹿島に移籍したことを考えても、京都には一定の育成力+選手を抜かれても堪えられるクラブとしての力があると認識されているように思える。

京都や、あるいはオリジナル10のジェフユナイテッド千葉や東京ヴェルディ以外の、たとえばファジアーノ岡山のように地域決勝から上がってきたチームや選手の質が評価され、代表に抜かれることが当たり前になるようであれば、日本サッカー強化を悲願にプロ化を果たしたJリーグの畑も豊かになったと言えるのではないだろうか。

もっとも、既にJが蒔いたクラブサッカー文化の種は花開いてしまい、「使わねーなら呼ぶんじゃねーよボケ!」と、堂々と文句を言う、価値観が「クラブ>代表」になっているファンも少なくない。ここまで述べてきたことは、代表選手を刈りとるのは「それなりのクラブ」からだけにしておいてほしいというクラブ至上主義者の感情に逆らうことになる。それでも、J2が代表選手あふれる世界最強の2部になるという夢想に魅力があることも、また確かなことなのだ。

■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」をスタートしている。