今年11月、W杯アジア3次予選の北朝鮮戦に敗れたものの、16試合無敗の快進撃を続けた、アルベルト・ザッケローニ監督率いるサッカー日本代表。躍進のきっかけとなったのは、同監督就任後、日本代表の公式戦初勝利となった今年1月13日の対シリア戦だ。

15日放送、テレビ朝日「報道ステーション」では、この試合で“日本の心臓”遠藤保仁が放った勝利を呼び込む1本のパスに迫った。

「ザックジャパンの分岐点 日本を救った1本のパス」と題し、サッカー解説者・澤登正朗氏が遠藤のプレーを分析すると、シリア戦における、遠藤を経由して行われたパスの本数を数えた同氏。J1全選手の一試合平均のパス数が約26本であることに対し、この試合の遠藤は前半だけで実に62本のパスをさばき、そのパスのコースはあらゆる方向へと放たれていた。

だが、後半に入ると、遠藤を徹底してマークするようになったシリアは、遠藤がボールを持つや、すぐさま多人数でプレッシャーを掛けはじめた。すると後半25分には、ゴール前でシリアのオフサイドを見逃したレフェリーが、GK・川島永嗣のプレーにレッドカードを提示。守護神を失ったばかりか、相手側のPKで1-1の同点に追い付かれてしまった。

前半に比べると、途端にパスの本数が減った遠藤は、攻撃に繋がる前方へのパスも激減する。しかし、澤登氏が「(前方へ)わざとパスを出さなかった?」という仮説を立てると、遠藤は「わざと横パスだったりとか、後ろのパスでワンタッチ、ツータッチでボールをはたいて、動き直して、その動作を繰り返すことによって、相手も結構疲れるので、そういうことを意識しながらマークをはがそうかなと」と語り、意図的に前方へのパスを控えたことを明かした。

ボールをすぐに後ろや横へ出し、相手ディフェンスを走らせて疲労を誘うばかりか、ゴール前を固めるシリアディフェンス陣を徐々に広げることでスペースを作り始めたという遠藤は、「基本的に相手を間延びさせるというか。相手のポジショニングの距離を少しでも離せば離すほどスペースが生まれる」と説明する。

前方へのパスが出なくなり、日本が攻めあぐねているように感じさせながらも、徐々にシリアのディフェンスを広げる作業をしていた遠藤。後半35分、遂に彼のマークが外れると、「これ狙ってみようかな」と振り返った遠藤は、ここでゴール前に走り込む岡崎慎司に起死回生のロングパスを放った。

すると、ゴール前で混戦となり、岡崎は倒されるような格好でPKを獲得するも、このPKは、試合後にシリア選手が「なぜ審判が日本にPKを与えたのかわかりません」と不満気に語り、岡崎自身も「ファウルになったのは幸運だった」と苦笑いを浮かべたもの。しかし、ここにも遠藤の狙いがあった。

「(川島が)退場になった時から、もしかしたらまたあるなと。特にペナルティエリアの中であれば。ギリギリのボールになれば、審判のメンタルも僕らを退場させていたので、もしかしたら(ファウルを)取ってくれるんじゃないかって思ってた」と語り、審判の心理すら読んでいたという遠藤は、同じような状況を作ることで実際にPKを獲得した。

「敵もレフェリーもうまく操ったっていったら変ないい方ですけど、ストーリー的にうまくいけました」と語る遠藤に、澤登氏が「なぜそんなプレーができるんですか?」と尋ねると、“日本の心臓”たる由縁をいかんなく明かした男は「頭で考えてサッカーを毎試合やっていれば自然と身に付くものなので、頭を使ってサッカーすることが大事」と答えた。

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