W杯の過去3大会でフランス代表の正ゴールキーパーをつとめたファビアン・バルテズ(35)がナントで現役に復帰し、代表への返り咲きにも意欲を示している。

 この報を、W杯後のフランス代表正GK、グレゴリー・クペ(リヨン)はどう受け止めているのか。12日付「レキップ」紙のインタビューで本人がその胸中を語った。「すでに最悪の時期を経験したから、何の心配もない」というクペは、もしバルテズが代表に復帰して自分が控えに回されたとしても「納得する」と話している。

 クペにとって「最悪の時期」とは、昨年5月のW杯出場メンバー決定の会見で、ドメネク監督が「正GKはバルテズ」と発表したときから始まった。前年に審判への“ツバ吐き事件”で3カ月の出場停止処分を受けたバルテズに代わり、W杯予選でフランス代表のゴールを守ってきたのはクペだった。

 予選で失点を最小限に抑え、実力で正GKの座をつかんだと確信していたクペだけに、控えに回されたショックは大きく、いったんは代表の合宿から荷物をまとめて帰りかけたことすらあった。その後、自分自身を納得させようと努めた様子がうかがわれたが、1試合も出られなかったW杯が閉幕するまで、複雑な思いを引きずっていたことは想像に難くない。

 その「最悪の時期」を経て「この先何が起ころうとも、自分から出て行くことはない」という心境に至ったクペ。恐れるとしたら、バルテズよりもむしろ伸びてきた若手の存在だとも語る。

 クペは大晦日に34歳の誕生日を迎えた。デビューしたときから、自分のトップレベルでのキャリアは「35歳まで」と考えていた。その年齢まであと1年に迫ったが、「今ほど調子がいいと感じたことはない。だから(引き際は)まだわからない」。ただし、2010年のW杯に出場することは考えていないという。「先が長すぎる。これまで(W杯出場に)力を注ぎすぎたし、苦しみすぎた」。

 現在は左太腿の故障に苦しんでいるクペ。当面は1月24日の対ボルドー戦で復帰することが目標だ。2月7日のフランス対アルゼンチン戦でピッチに立てるかどうかはその後に決まる。