スポニチ

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 広島・遠藤淳志投手(25)が15日、秋季日南キャンプの紅白戦(天福)で存在感を発揮した。紅組の6番手として3点優勢の最終8回に登板。黒田博樹球団アドバイザーの助言「5割の力で」を実践し、若ゴイから3者連続三振を奪ってみせた。今季わずか3試合の登板に終わり、危機感を募らせて見据える8年目の来季。何が何でも1軍に食らいつく決意だ。

 最速143キロでも伸びやかな直球と、チェンジアップのコンビネーションが光った。紅組6番手で8回に登板した遠藤。先頭・内田をチェンジアップ、続く田村を外寄り直球で見逃し三振に仕留めると、最後は中村貴を低めチェンジアップで空振り三振に斬った。

 「良かった時の自分というか、今日は真っすぐでファウルが取れていたのでいい感覚で投げられましたし、その分、変化球も生きたのかなと思います」

 鮮やかすぎる3者連続三振。「力が入りすぎて」1回2安打1失点に終わった、前回11日の紅白戦登板を修正した。黒田球団アドバイザーからの金言が生きた。切れ味こそが25歳の長所。7日のブルペンで「5割の力で投げてみろ」と言われ、感覚を取り戻した。

 「自分が思っていた感覚と黒田さんに教えてもらった感覚には凄くギャップがあった。“腕は体に巻き付くものだ”と言われて。アドバイスが自分の体に染みついています」

 疲労が蓄積した中での快投だった。キャンプ初日の4日から自らに義務づけ、1日も欠かさない投球練習。6日に160球、黒田アドバイザーから助言を受けた7日には実に184球を投げ込み、実戦登板した後もブルペンに入って投げた。

 「ここまで投げ込んだキャンプは初めて。結構疲れています。野手が振り込んでいるなら、僕たちもやらないといけない。それが監督が掲げる、同じ方向を向いて戦っていくことなのかな…と」

 投球を見守った新井監督は、遠藤の好投に目を細める。「連日ブルペンに入り、疲労がある中で真っすぐがよかったし、腕がしっかり振れてボールを叩けていた。だから第2、第3球種もよかった。凄く頑張ってくれていると思う」と称えた。

 5勝を挙げた20年から主に先発を担ってきたが、今季は中継ぎでわずか3試合に登板したのみ。「今年が一番しんどかった。どこに戻ったらいいのか、どうやって戻せばいいのか」迷走した。8年目を迎える来季。胸中には危機感が募る。

 「先発をやりたい思いはありますが、中継ぎでも食らいついていきたい。1軍で投げてなんぼ。自分の長所を出していきたい」

 その表情には迷いが消え、投球には遠藤本来の切れが戻った。逆襲へ、覚悟がにじむ。 (江尾 卓也)