たこやきを焼く“たこやき先生”こと、川人佑太さん

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たこ焼き一舟(1パック)500〜700円が相場の時代に、たこ焼き4個を100円で販売する店がある。その名も「100円たこやき」。しかも店内にある“無料チケット”を使えば、通常4個100円で販売されているたこ焼きが、高校生までタダというから驚くしかない。
ズバリ儲かっているのかも含め、高校生までが無料になるカラクリや店をはじめたキッカケについて取材すべく、店舗のある大阪府高槻市の住宅街へ。現役教師であり、「100円たこやき」を切り盛りする“たこやき先生”こと川人佑太(37歳)さんに話を聞いた。

◆「100円たこやき」は儲かるの?

「100円たこやき」は、子どもから大人まで誰もがたこ焼き4個を100円で購入できる激安店。そのうえ高校生以下は、店内にある“たこやきチケット”を利用することで、たこ焼き4個が無料で味わえる。客にとっては嬉しい店だが、利益があるのかは気になるところ。

「内訳についてはお教えできませんが、オープン当初から赤字ではなかったです。もちろん商売としてやっていこうという気持ちはありましたが、趣味の延長だったからこそ僕の人件費という概念を無視してはじめられたという部分はあります。オープンから3年以上経ち、僕の人件費もようやく捻出できるようになりました」

実際、最初の頃はずっとタダ働きだったと話す。そのような苦しい状況であれば、普通は値上げも考えることだろう。それなのにたこやき先生は、最初100円で販売していたたこ焼きを、高校生以下であれば無料で購入できる制度までスタートさせている。一体なぜなのか。

◆人件費無視の「たこ焼き屋」になるまで

キッカケは、数年前に遡る。新型コロナウイルスがパンデミックを引き起こし、緊急事態宣言が発令された。外出制限や営業時間短縮など、これまでの生活が一変し、自分の生き方を考え直したという人も少なくない。実は、たこやき先生もそんなひとり。

「緊急事態宣言が明けても、遠くまで行けないなど自粛期間が長く続きました。でも大阪市出身で、少し前までフルタイムで働いていた僕は、居住地の高槻市周辺に友だちがいない。そのような状況のなかで、奥さんや子ども、職場の人たちとは違う、身近な誰か。そういう人たちと雑談がしたいと考えるようになりました。

雑談がしたいというのは、メタファー(わかりやすく説明するために挙げた、ひとつの例)。気軽に雑談ができるような、そういったコミュニティがあれば、というような思いがだんだん強くなっていった感じです」

そして、2021年4月。たこ焼きを焼く1Fに少し客席があり、2Fにも客用スペースのある「100円たこやき」をオープンさせた。けれど、ここで疑問がわく。なぜ、たこ焼きを破格の100円で提供しようと思ったのか。厳しい経営になることは簡単に予測できたはず。

◆そうだ…高校生以下は無料にしよう!

たこ焼きを100円で提供しようと思った理由については、記事の序盤でも触れた「趣味の延長だから」という思いにつながる。そこに、価格を安くすることで「(お客さんが)たくさん来てくれたらいいな」といった考えや社会関係資本の概念が後押しをした形だ。

「近い距離で気軽に雑談できるコミュニティを持っていないと気づいたことが、自分の生活を取り巻く資本を見つめ直すキッカケになりました。日々の生活を支える金銭や財産などの経済資本、そして、人とのかかわりなどによる社会関係資本の大きく2つです。

すると、自分のなかに社会関係資本が不足していることに気づきました。逆に、僕は通信制高校で数学を教える教師。月々お給料をもらっているので、経済資本の面においては満たされている。そう感じたことも『100円たこ焼き』のオープンへとつながりました」