人型ロボット、中国で人気 機能だけでなく感情も
第7回世界声博会で、自撮り棒を掲げ、来場者と記念撮影する人型ロボット。(10月24日撮影、合肥=新華社記者/傅天)
【新華社合肥11月12日】世界でここ数年、生成AI(人工知能)技術と汎用的な大規模言語モデルが急速に発展し、人型ロボットの汎用性が高まった。人型ロボットは中国で人気が急騰し、案内・接客、医療・ヘルスケア、重量貨物の運搬、調理・お茶の提供などの場面で活躍している。
工業情報化部は2023年、「人型ロボットのイノベーション発展に向けた指導意見」を発表し、25年までに人型ロボットのイノベーション体系を初歩的に構築するとした。「『ロボット+(プラス)』応用行動実施計画」「産業用ロボット産業規範条件(2024年版)」なども実施している。同部傘下の賽迪研究院は、中国の26年の人型ロボット産業規模が200億元(1元=約21円)を超えると予想する。
第7回世界声博会の会場を「歩く」人型ロボット。(10月24日撮影、合肥=新華社記者/傅天)
安徽省合肥市でこのほど、AI技術の実用化と発展を目指す「第7回世界声博会」が開催された。音声認識大手、科大訊飛(アイフライテック)の季超(き・ちょう)ロボット首席科学者は、第2世代のエンボディドAI(身体性を持つ人工知能)を搭載する人型ロボットを披露した。直立歩行のロボットは音声で指示を受けると、テーブルの前に来て膝を曲げて飲み物を取る動作を「滑らかに」行った。季氏は「人型ロボットは先進製造業の集大成であり、電子、センサー、ソフトウエア、通信、AIなどのハイエンド産業の共同発展をけん引する」と話す。同社は現在、音声・言語・身体動作などの複数の情報を利用した相互作用「マルチモーダルインタラクション」を可能とした「ロボット超脳プラットフォーム」を通じ、大規模言語モデルを開放し、国内のロボット企業450社を支え、ロボット開発者1万5千人と連携している。
民間用ロボットを手掛ける杭州宇樹科技は、高さ1.8メートルの人型ロボット「Unitree H1」を出展した。立ち上がる、座る、折りたたむなど難易度の高い動作で来場者の注目を集めた。技術サービス担当の李恩沢(り・おんたく)氏は「このモデルの販売価格は9万ドル(1ドル=約154円)で、すでに100台以上販売した。人型ロボットの完全商用化に想像の余地を作り出した」と紹介した。
産業用のほか、走って階段を登り、コーヒーを淹れ、外科手術をするなどの機能を備えた人型ロボットの新製品も相次いで登場し、進化を続けている。外見がますます「人」に似通り、機能も向上、絵を描く、質疑応答・案内などから、感情のやり取りへと発展している。
第7回世界声博会で、インテリジェントキャビンの機能をテストするロボット。(10月24日撮影、合肥=新華社記者/傅天)
ロボットのスタートアップ、無論科技(安徽)の創業者、曹栄繇(そう・えいいん)氏は「人型ロボットが真っ先に用いられるのはビジネスや公共の場面などで、それから家庭や介護などのサービスに活用されるだろう。ロボットの人間化がより高く求められる」と指摘。ロボットに生命力と感情を持たせることは、研究の価値があるとした。今回は、完成したばかりの人型ロボット「Anni」を持ち込んだ。このロボットは文脈と場面を結びつけてユーザーの意図をくみ取ることができ、アイトラッキング、顔やジェスチャーによる感情表現、「人」のような没入型交流などの機能も備える。「大規模量産が可能となれば、このロボットは飲食・文化・娯楽、医療・ヘルスケアなどの産業で幅広く活用されるだろう。科学技術が生活を変える未来はいっそう具体化する」と意気込みを語った。
複数の投資銀行とシンクタンクは、35年に世界の人型ロボット産業規模が1兆元に拡大すると予想する。天津大学機械工程学院の孫濤(そん・とう)教授は、「中国は大きな市場規模と進んだ製造能力を頼りに、世界のAI技術革新・製品普及の重点地域になっている」と指摘。ただ、人型ロボットの大規模な普及には、電力消費と電池のほか、自然なインタラクション、意思決定、任務計画の能力など、技術的問題の改善が必要になるとも述べた。