「ケンちゃんにはお金を任せられない」浅草のボンボンが“接客業”の妻とともに娘、姉さらに父を殺害した容疑で再逮捕。伯父の重大証言とは…

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東京・浅草でホテルを経営していた夫婦が4歳の娘を毒殺したとして逮捕され、実姉も殺した罪に問われている事件。警視庁捜査1課浅草署捜査本部は10月25日、実の父親も薬物で中毒死させた疑いが強まったとして夫婦を殺人容疑で再逮捕した。観光名所を舞台にした連続殺人事件はさらに陰惨を極める“家族喰い”の様相を呈してきた。

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創業者の父にも不凍液を飲ませた疑い

再逮捕されたのは細谷健一(43)と妻の志保(38)両被告。

2人は昨年3月、次女の美輝ちゃん(当時4歳)に向精神薬「オランザピン」と車の不凍液に使用する化学物質「エチレングリコール」を摂取させて殺害したとして警視庁が今年2月に逮捕した。

これに先立つ2018年4月に不審死を遂げていた健一容疑者の実姉の細谷美奈子さん(当時41)についても不凍液を摂取させて殺害したとして、警視庁は今年3月にふたりを再逮捕、3ヶ月の鑑定留置を経て9月に起訴されていた。

捜査本部は2018年6月に73歳で死亡した父の細谷勇さんについても調べを進めていた。

勇さんは体調を崩し病院で死亡、この際司法解剖などは行なわれず死因は「敗血症」と診断されたが、保存していた血液やカルテに記載されたデータなどからエチレングリコールの摂取による殺害の疑いが強まった。

「勇さんは亡くなる前年の2017年ごろから『腰が痛い』などと体調不良を訴えて入退院を繰り返し、病院では『再生不良性貧血』と診断され、結果的に敗血症で死亡した。
しかし同時期に健一、志保夫妻が通販サイトで不凍液を購入していた履歴を捜査本部は押収したパソコンやスマホの履歴で確認。

さらに病院に保存されていた勇さんの血液データやカルテから、不凍液の成分であるエチレングリコールを摂取した際の特徴である『クレアチニン』や『尿酸』の値が上昇していた。

勇さんは当時、健一夫妻と同じ台東区内のマンションの別室に住んでおり、日常的に行き来して飲食物に不凍液を混ぜ込むなどして摂取させることで死に至らしめたと判断した。勇さんの妻であり健一容疑者の母親も2018年1月に68歳で『病死』しており、捜査本部は関連を調べています」(社会部記者)

勇さんが一代で築き上げた資産や事業は長男である健一容疑者が継承した。しかし勇さんが急死する以前、健一容疑者は「総領息子として力量不足」とみられていたようだ。

千葉県東金市出身の勇さんは若くして上京、東京・浅草の地場産業である皮革加工に携わって独立し、「ホソヤ産業」を創業した。そして2012年には隅田川にかかる駒形橋近くに「浅草ホテル旅籠」をオープンして旅館業にも乗り出した。

反対されていた結婚

勇さんの兄(87)は今年2月、取材にこう語っていた。

「勇にしてみれば、ケン坊(健一)は大切な跡取り息子だったのよ。それこそ勇は田舎の東金から一人出ていって、浅草のなめし革の会社に入って独立、起業までしたわけだから、かなりの負けず嫌いだった。

自分が作った会社を後世に残したいという思いも人一倍強かったんだろう。実際に『女の子はいらない』というほど男の子を欲していたし、そうして生まれたケン坊には、相当お金をかけて手塩にかけて育てていた。

自分が敷いたレールに乗せようと、学校もすべて私立に進ませていたくらいだから、ケン坊が大学卒業後、すぐに会社を手伝わなかったときは腹を立てていたよ。

その後、ケン坊はいろんな職を転々としたあとに、一応は家業を継ぐみたいな形にはなったみたいだけど、勇からすれば納得できない部分も大きかったんじゃないかな」

一代で財を成したやり手の父とボンボンの「ケン坊」との確執が決定的になったのが、志保容疑者との結婚だったという。接客業に就いていた志保容疑者にとって、健一容疑者は「太客」だった。

「勇も猛反対したんだけど、そのまま結婚しちゃってさ。それまでケン坊の教育には相当力を入れてきたから、もうちょっと別の女性と結婚してほしかったんだろうね。だから結婚後も『あいつは期待はずれだったわ』と愚痴をこぼしていたよ。期待していた分ショックが大きかったんだろう」

一族会社の「ホソヤ産業」の行方は、放蕩息子よりもしっかり者の姉の美奈子さんの細腕にかかるところが大きくなっていた。会社の経理を担当していた美奈子さんが「ケンちゃんにはお金のことは任せられない」と周囲によくこぼしていたという。

次々に家族に手をかけ、資産を簒奪(さんだつ)した夫婦は、黙秘を続けているという。事件の結末はまだ、見えない。

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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班