横浜 手足縛られ男性死亡 千葉でも…関東で相次ぐ“緊縛事件”関連は

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横浜市の住宅で16日午前、高齢の男性が手足を縛られた状態で死亡しているのが見つかりました。朝早くには、千葉県白井市の住宅で親子が縛られ、現金や車を奪われる事件が起きています。2つの事件は、首都圏で相次ぐ“闇バイト”による強盗事件と関連があるのでしょうか。

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■横浜で男性死亡 手足縛られ…

現場は横浜市青葉区の住宅街。警察によると、午前9時半ごろ、隣人の女性から110番通報がありました。

隣人からの通報
「玄関ドア脇の窓が昨日から開いたままになっている。寒いのになにかあったのでは」

警察が駆け付けると、脱衣所で後藤寛治さん(75)が意識不明の状態で倒れているのが見つかり、その後、死亡が確認されました。玄関の鍵は開いた状態でした。捜査関係者によると、玄関脇の窓が割られていたということです。近所の人の話では、2人暮らしだったといいます。

近隣住民
「いい感じのおじいさんとおばあさんとお住まいでした。子どもがいるので、顔見知りの方が亡くなったというのはちょっとショックだと思うので(子どもを)迎えに行ってきます」

近隣住民
「(男性は)普通のサラリーマン。定年になったかどうか知らないけど。(Q.ちょうど定年になるかならないか)そうそう。会社行ってるの?って聞いたら『もう在宅だよ』って2〜3年前に。(Q.誰かともめているみたいな話は)聞いたことない」

近隣住民
「(Q.最後に会ったのは)今月の初めぐらいで1回会ってね。その時は『こんにちは』で終わって。(Q.その時の様子は)彼が出かける時にカバン背負っていった。(Q.家にいる時間が長かったか)出かける時しか見ない。バスに乗って。毎日同じ時間に出ていって帰ってくるのではなくて、朝早くだったり夕方になって『ちょっとお使いだよ』とか言って」

事件があった住宅は高台の角地に建っていて、そこに通じる道路は1本しかありません。

近隣住民
「割と狭い道が多かったり、裏は雑木林になっているので、抜けていくのは難しい道だと思うんです。車1台分通れるぐらいの狭さ。その先は行き止まりになっていると。(Q.あそこの一帯に住まない方が行く道ではないか)ではないと思います。新しいエリアではない。割と古くある家だと思います」

捜査関係者の話では、亡くなった後藤さんは手足を縛られていて、暴行を加えられたような外傷や出血もあったということです。盗まれたものがあるかは捜査中で、室内を荒らされた形跡については、警察は答えを差し控えるとしています。

■“闇バイト強盗”との共通点

気になるのは、この1カ月半、首都圏で闇バイトが絡んだ強盗事件が相次いでいること。警察庁は、この全てで同じ指示役が暗躍している可能性があるとみています。さらに、このうち3件には「個人宅へ侵入し、住民を縛る」という共通点もあります。

千葉県白井市で起きた事件も関連があるかもしれません。警察によると、16日午前4時ごろ、男2人が住宅に侵入。就寝していた70代女性と、一緒に住む40代の娘を粘着テープで縛り、暴行を加えたうえ、現金約20万円と車を奪って逃走しました。通報したのは、男たちが逃走した後、自力でテープをほどいた母親です。

通報した母(70代)
「強盗です。就寝中に目隠しをされ、体をたたかれ、金を要求された」

母子2人とも全身打撲のけがをしていて、母親は左手骨折で重傷だといいます。捜査関係者によると、2人は1階の窓ガラスを割って中に入ったとみられます。電話で指示を受けながら犯行に及んでいたとみられることから、この事件も闇バイトと関連している可能性は否定できません。

捜査関係者によると、事件直前、現場近くのコンビニの防犯カメラに男らの姿が映っていたとみられています。現場の住宅はコンビニから300メートルほどの場所にあります。

■1週間前に…事件の前兆?

周辺で取材を進めると、こんな情報も出てきました。1週間ほど前、1人の男が家々を訪問して周っていたといいます。

近隣住民
「『金目の物とか金とか指輪とか、そういうものがないか?』と。(Q.確認している)そう。そこに入ってきて『玄関で話する』って言って『貴金属ないか?』って」

近隣住民
「玄関入れば分かる。間取りというか。靴とかあれば『お父さんと2人(暮らし)なんだ』とか」

白井市を管轄する印西署によると、事件前、リフォーム会社やガス会社を装った電話がかかってきたという相談も多数寄せられていたといいます。油断して家に呼んでしまった人からは「勝手に家の周囲を周られた」「名刺も置かずに去っていった」という事例も寄せられていて、印西署は“強盗事件の前兆”の可能性があるとして注意を促していました。

■横浜・千葉 2つの事件に関連は

犯行後、現場の住宅にあった車と、自分たちが乗ってきた車、2台に分かれて逃走した男2人。現在も行方は分かっていません。ただ、捜査関係者への取材で、意外な地名が浮上しています。事件後、容疑者とみられる男が再びコンビニにやってきて「横浜に行くからタクシーを呼びたい」と店員に話しかけていたといいます。

横浜で起きた事件については、金品が盗まれたかどうかまだ捜査中の段階で、警察は、一連の強盗事件との関連も視野に捜査を進めています。

■“緊縛”“高齢者狙い”犯人像は

元埼玉県警捜査1課の佐々木成三さんに聞きます。

(Q.横浜の事件では被害者の手足に縛られた形跡がありました。事件の特徴からみえることはありますか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「私の捜査経験上の推測にはなりますが、手足を縛るということは殺害目的の侵入ではないのではないかと。例えば怨恨目的であれば縛る必要がないです。手足を拘束する目的は、何らかの話を聞き出すといった目的があったと感じます」

(Q.捜査関係者によると、部屋中の引き出しが開けっ放しになるなど、一目見て荒らされたという様子は確認できなかったということですが、どんなことが推測できますか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「これは緊縛強盗を疑う時の特徴だと思います。緊縛した理由が金銭の在りかを聞き出す目的だとすると、荒らす目的はなかったと感じます」

(Q.犯行グループは話を聞き出して、目的のものにたどり着いているかもしれない)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「その可能性は十分あります。もしかすると想定外の出来事があって、奪うことなく逃げた可能性も十分考えられます」

(Q.住宅が密集した場所で、高齢者が住む家に入っています。犯人像で分かることはありますか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「男性1人を縛るのは、高齢者であっても複数人いないと無理だと思います。そのため、今回の犯行は複数犯の可能性が十分あると思います。また、窓を割って入っているため、顔見知りの犯行ではないと感じています」

(Q.闇バイトで実行犯を募る強盗事件が関東で多発しています。今回の事件で金品が盗まれているかは確認が取れていませんが、これまでの強盗事件との関連性をどうみますか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「こうした強盗が連続すると模倣犯の疑いも感じますが、これだけ関連する強盗事件が発生していて、実行犯が逮捕されていることもメディアが連日のように報道しています。そのため、この事件を模倣するメリットがないと感じます。今回の事件も同様に匿名流動型犯罪グループの犯行の可能性は十分あると感じています。その理由としては類似点が多いことです。“緊縛”“高齢者”“一般住宅”こういった共通するワードが多いので、闇バイト関連も視野に入れないといけないと感じています」

(Q.千葉の強盗事件と横浜の事件はほぼ同じタイミングです。関連はあり得ますか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「横浜の事件の犯行時間が特定できていないので、現段階では関連性を断定できません。これは現場検証、司法解剖で被害者の死亡推定時刻を割り出し、そこから犯行時間がいつなのか、現場からなくなったものがあるのかどうか、周辺の防犯カメラ、そういった捜査をしたうえで、点が線になった時に、闇バイト事件との関連性が見えてくると思います」

(Q.闇バイト事件との関連も否定できないなかで、死者も出ていることはどう考えればいいですか)

元埼玉県警捜査1課 佐々木成三さん
「去年、東京都狛江市で起きた事件を思い出します。今回も被害者の体には複数のアザがあるという報道があります。死因に直結する刺し傷といった凶器は使われていないなと。ただ、暴行を続けると死に至る危険性があります。まずは司法解剖をして死因を解明する必要があると思います。実行犯の逮捕は時間の問題だと思いますが、闇バイトの事件だったとしても、指示役までつながるかどうかは分かりません」