70分からシャドーで投入された鎌田。ボランチで先発させるべきだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本代表が北中米ワールドカップ・アジア最終予選の第4戦で、オーストラリアとホームで対戦。58分に谷口のオウンゴールで先制されたが、76分に相手のオウンゴールで追いつき、1−1で引き分けた。

 日本の攻撃は、あまり機能しなかった。なかなか相手の裏を取れず、対人でも優位に立てない。センターフォワードの上田と左シャドーの南野は連係できず、共に孤立。右シャドーの久保と右ウイングバックの堂安のポジションチェンジは見られたけど、攻撃の軸となる選手がいなかった。

 チャンスメイクは左ウイングバックで先発した三笘や、途中からウイングバックに入った中村と伊東に期待するしかない状況。今、採用されている3−4−2−1では、ダブルボランチのどちらか1人にもっと攻めてほしいけど、今回はそれがほとんどなかった。

 今までボランチで攻撃面を担っていた守田は、体調不良で欠場した遠藤の役割を果たすかのように後ろにいる。守田とコンビを組んだ田中も目立った攻撃ができなかった。ホームでの戦いだから相手が引いてくるのは予想できたはず。なぜ攻撃センスのある鎌田をボランチで先発起用しなかったのか、疑問だ。

 中央から効果的なアタックがあまりにも少ないし、そのエリアでフリーキックも取れなかった。高さで劣る日本がサイドからのフリーキックやコーナーキックを数多く得ても、そこまで怖さを与えられない。

 中村のクロスが相手のオウンゴールを誘発して何とか追いつけたけど、あの場面では直前に中村を追いかけた選手が、ボールと関係ないところで三笘と接触して倒れていた。三笘のファウルが取られてもおかしくなく、日本にとってはラッキーだったよ。

 オーストラリアは自分たちの強みを活かし、日本をよく研究していたと思う。両ウイングバックにはスピードのある選手を配置したけど、5バック気味に構えて、真ん中には対人能力の高い選手を置いて日本の攻撃を弾き返した。
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 攻撃では、日本の裏を狙ってカウンターを繰り出す。先制点はオウンゴールだったけど、その前に三笘の背後をうまく突いていた。

 中国に7−0、バーレーンに5−0と、ゴールラッシュで連勝を飾った日本。サウジアラビアには敵地で初めて勝利した。圧巻の3連勝で日本はずば抜けて強い、と思われるかもしれないけど、錯覚だよ。

 サウジアラビアには2−0で勝ったけど、楽勝ではなかった。そして、オーストラリアに勝てなかった。結局、ワールドカップの常連であるアジアの実力国を圧倒できないのが現実だよね。

 今回の予選は各グループの上位2か国がストレートで本大会に進めて、3位と4位は4次予選に回る。日本のグループCはオーストラリア、サウジアラビアとの3か国で“2枠”を争うことになるだろう。

 次回は11月に敵地でインドネシア、中国と対戦する。明らかに格下の相手だ。圧勝しても勘違いしてはいけないよ。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、79歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。