防衛に成功した中谷潤人は両手を広げ喜ぶ(撮影・佐々木彰尚)

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 「ボクシング・WBC世界バンタム級タイトルマッチ」(14日、有明アリーナ)

 WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(26)=M・T=は同級1位のペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)に6回2分59秒TKO勝ちし、2度目の防衛に成功した。

 千両役者がキッチリと締めた。2日間にわたった七大世界戦の大トリ。中谷が期待通りのノックアウトで、2度目の防衛を果たした。これで3戦連続、世界戦では実に8戦中7KO。圧巻の強さを披露し「まずはホッとしている。ノックアウト負けのない選手を倒して勝ったのはよかった」と笑みを見せた。

 思い描いたように、試合を支配した。初回は静かな立ち上がりから、中盤に左ストレートをヒット。相手が前に出てくる場面が多かった2、3回は「パワー、力感は勉強できた。大丈夫だなと判断した」と実力の把握が目的。その後の接近戦は「倒すという意味では、消耗させていく手段も必要」という理由だった。

 そして迎えた6回。左のカウンターで相手の動きを止め、追撃の連打で最初のダウンを奪取。何とか立ち上がって反撃を試みるペッチに対し、ラウンド終盤に狙い澄ました左ストレートを顔面に打ち込んで2度目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。自身5年ぶり、世界戦では初のサウスポー相手も問題にせず。「練習していた部分。近い距離も遠い距離も、試して倒せた」と納得の表情を浮かべた。

 日本人が世界王座を独占するバンタム級。その中でも強烈な輝きを放つ“ネクスト・モンスター”は、今後を問われ「チャンピオン誰でも。『Who’s next?』(次は誰だ?)って感じです」と不敵に笑った。1階級上の井上尚弥への意識については「まだ挑戦するとかそういう形ではない。まだバンタム級なので」と笑ってかわし、次なる目標を「ずっと言っているのが統一戦なので」と掲げてうなずいた。誰もが納得する戦いぶりで、バンタム級最強を証明する。

 ◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)1998年1月2日、三重県東員町出身。アマチュア戦績は16戦14勝2敗。2015年4月にプロデビュー。19年に日本フライ級王座、20年にWBO世界同級王座、23年にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得した。同王座を獲得したアンドリュー・モロニー(オーストラリア)戦は米国で最も権威ある専門誌ザ・リングの年間最優秀KO賞に選出。24年にWBC世界バンタム級王座を獲得。リング誌が選定する全階級を通じた最強ランキング「パウンド・フォー・パウンド」でトップ10入りした。身長172センチ、リーチ170センチ。左ボクサーファイター。