12回、井上拓真(左)を攻める堤聖也(撮影・佐々木彰尚)

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 「ボクシング・WBA世界バンタム級タイトルマッチ」(13日、有明アリーナ)

 WBAバンタム級王者の井上拓真(大橋)は堤聖也(角海老宝石)に0−3の判定で敗れ、3度目の防衛に失敗した。拓真は序盤から冷静に堤のアタックをさばいていたが、ラウンドが進むにつれて堤の手数の多さに苦しみ、10回には不運なダウンを喫するなど不本意な戦いでベルトを手放した。WBC王者の中谷潤人(M・T)との統一戦など、今後に期待されていたドリームマッチは完全に白紙。あまりにも痛すぎる敗戦となった。

 拓真が2012年8月3日、インターハイ準決勝のリベンジに燃える堤の執念に屈した。

 悪夢の転落劇に、拓真は「因縁どうのこうのというよりは、自分が弱かったっていうだけ。判定を聞く前から負けだと思いました。後半あたりから相手のペースで付き合っちゃったのもありますし、ポイントを考えた上でも負けてたなとは感じましたね。全てにおいて中途半端だったな、というのはすごい感じます」と自嘲の言葉を重ねた。

 大きなポイントは10回だ。拓真の左サイドに回った堤の左フックが顔面を直撃し、拓真はロープまで吹っ飛んだ。レフェリーはダウンを宣告し、拓真は抗議したが覆らず。所属ジムの大橋秀行会長も「スリップダウンじゃないかなと思うけど…。ダウンじゃないと思う。勢いがあまってなったから」と首をかしげた。

 とはいえ、そこまでもロープを背負って堤の連打を浴びる場面が目立ち、拓真は「中途半端で見栄えが悪かったなと感じます」と反省。11、12回は激しく打ち合ったが最後まで堤を崩せず、「勝敗を分けたのは気持ちの部分ですかね。技術面でもしっかり対策してきたんだなというのは感じました」と敗北を認めた。

 熱望していた中谷との統一戦など、今後についてのプランなども完全に白紙となる。堤へのリベンジについて問われたが「ゆっくり休みたい」と話すにとどめ、敗戦のショックは隠せない。だが、拓真は希代の負けず嫌い。再起の時が待たれる。