「くも膜下出血」とは?原因や前兆となる症状についても解説!

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監修医師:
勝木 将人(医師)

2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

髄膜腫の概要

髄膜腫(ずいまくしゅ)は、脳や脊髄を包んでいる「髄膜」に生じる腫瘍です。髄膜腫は脳腫瘍の中で最も多く見られる腫瘍で、女性に好発し、ほとんどが良性です。初期は無症状であることが多く、脳ドックなどの画像検査で無症状の髄膜腫を偶然見つける場合も多いです。基本的に転移はせず、発生部位でゆっくりと成長しますが、まれに悪性化することがあります。

髄膜腫は、発生部位によってさまざまな種類に分類されます。たとえば、大脳を守っている頭蓋骨の内側に接するように生じる「円蓋部髄膜腫」、頭の中央を通る太い静脈に接して生じる「傍矢状洞髄膜腫」、前頭葉と側頭葉の間にある蝶形骨縁で生じる「蝶形骨縁髄膜腫」などがあります。

手術や放射線治療で多くの患者さんが良好な経過をたどりますが、腫瘍が再発したり、悪性化したりする恐れがあるため、長期的かつ慎重な経過観察が必要です。

髄膜腫の原因

髄膜腫が生じる原因は判明していません。男性よりも女性に好発する点、遺伝性の病気である神経線維種Ⅱ型の約半数以上で髄膜腫が合併する点から「女性ホルモン」や「遺伝子異常」が関わっていると考えられています。
(出典:難病情報センター「神経線維腫症Ⅱ型(指定難病34)」)

髄膜腫の前兆や初期症状について

髄膜腫の発生部位によって、さまざまな神経症状が現れます。初期には無症状で経過することが多いですが、腫瘍が大きくなるにつれて、周囲の神経や組織を圧迫し、症状が現れるようになります。

頭痛

髄膜腫の初期症状として、頭痛が挙げられます。髄膜腫が生じると頭蓋内の圧が高まり、頭痛をはじめ、吐き気や嘔吐などの症状にもつながる可能性があります。髄膜腫の頭痛は、朝起きたときに感じやすいのが特徴です。また、一般的な頭痛とは異なり、頭痛薬などで一時的に痛みを軽減できても、腫瘍を除去しない限り根本的な改善はできません。

視覚障害

腫瘍が視神経や視交叉(視神経の交差する部分)の近くで発生し、これらを圧迫すると、視力の低下や視野が一部欠ける「視野欠損」や物が二重に見える「複視」といった症状が現れることがあります。視覚的に、物を正確に捉えるのが難しくなるため、日常生活に大きな支障をきたします。視覚障害の中でもどのような症状が出るかは、腫瘍の位置によって異なります。

感覚障害や運動麻痺

髄膜腫が脳の感覚機能や運動機能をつかさどる部分を圧迫すると、手足の感覚が落ちる、上手く動かせない、歩きづらいといった症状があらわれます。基本的に片側の手足に症状があらわれますが、2つ以上の髄膜腫(多発性髄膜腫)の場合、両方の手足に症状があらわれることがあります。

認知機能の低下

前頭葉や側頭葉に近い部位に髄膜腫が生じると、認知機能の低下が起こる可能性があります。認知機能には、記憶力や集中力、判断力、思考などが含まれ、日常生活に支障をきたします。本人が気づくことは難しく、多くの場合は周囲の人が気づきます。

けいれん発作

髄膜腫が大脳皮質(脳のシワの部分)に近い場所にある場合、けいれん発作が発生することがあります。けいれん発作は、腫瘍が影響して脳内に異常な電気活動が引き起こされることで生じます。発作の頻度や強さは個人差があるため一概には言えません。

髄膜腫の検査・診断

髄膜腫では主に画像検査の結果をもとに診断が下されます。

MRI

造影剤を使ったMRIによって、腫瘍の位置や大きさ、脳と腫瘍の境界が正確に把握できます。MRIにて確認できる脳浮腫(脳に水分が溜まり膨張した状態)が重大なほど、脳や神経、血管との癒着が強いことがわかります。

脳血管造影

脳血管造影は、血管内に造影剤を入れ、X線撮影することで血管の状態を詳しく見ることができます。脳血管造影で腫瘍の発生部位や、腫瘍に栄養・酸素を供給している血管の位置を予測するのに役立ちます。

CT

CTも造影剤を使って撮影する方法で、髄膜腫の可視化ができます。CTは骨の状態を調べるのに適しているため、頭蓋骨の形などを確認しやすいのが特徴です。併せて、どれだけ脳を圧迫しているかも確認できます。

神経学的検査

画像検査で髄膜腫の診断は可能ですが、治療に向けてどのような障害があるかを確かめるべく神経学的検査を行うこともあります。神経学的検査では、反射、筋力、感覚、視覚や聴覚などを評価し、神経系に異常があるかどうかを確認します。

髄膜腫の治療

髄膜腫の治療は、腫瘍の大きさ、位置、症状の有無、年齢や全身状態など、さまざまな要因を考慮して決定されます。

現時点では髄膜腫に有効な薬剤はないため、以下の手術療法と放射線療法が選択肢となります。

手術療法

髄膜腫では、手術が第一選択肢です。腫瘍を完全に摘出できれば、治癒に加えて再発リスクを下げられます。手術の難易度は、腫瘍の位置や大きさ、周囲の神経や血管との位置関係によって異なります。場合によっては、放射線治療との併用を検討します。
また腫瘍の摘出前に、栄養血管を塞栓する血管内治療を組み合わせることもあります。

放射線治療

手術が難しい場合や、腫瘍が一部のみの場合は、放射線治療が行われます。放射線治療は、腫瘍細胞を破壊し、成長を抑えることが可能です。

放射線治療のなかでも、腫瘍に集中して放射線を照射する「ガンマナイフ」や「サイバーナイフ」といった定位放射線治療が行われます。しかし、放射線の照射によって髄膜腫の悪化や周囲の組織を傷つけるリスクがあるため、基本的には放射線治療よりも手術療法が優先されます。

なお高齢者など、手術リスクが高い患者では、腫瘍が小さく無症状で、進行が非常に遅い場合に限り、すぐに手術や放射線治療などを行わずに経過観察することもあります。その場合も、定期的にMRIやCTで検査を行い、腫瘍の成長や新たな症状が出ていないかを確認していく必要があります。

髄膜腫になりやすい人・予防の方法

髄膜腫は、中高年の女性に好発する傾向がありますが、原因が判明していないため他の発症リスクに関しては不明です。

同様の理由から予防することも困難ですが、悪性化を防ぐために早期発見が重要であることは明らかです。無症状で進行することも多いため、症状が出現してからではすでに腫瘍が成長している可能性が高いです。そのため、定期的に脳ドックなどを受け、早期発見を目指すことが重要になります。


関連する病気

脳腫瘍

神経膠芽腫Ⅱ型

下垂体腺腫脳梗塞脳出血くも膜下出血

参考文献

国立研究開発法人国立がん研究センター 希少がんセンター「脳腫瘍」

東京大学医科学研究所附属病院 脳腫瘍外科「髄膜種」

東京慈恵会医科大学附属 柏病院「髄膜種」

慶應義塾大学医学部外科「脳神経外科学教室」

難病情報センター「神経線維腫症Ⅱ型(指定難病34)」