スカウトの狙いは岡本だったのか?

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メジャースカウトが東京ドームに

 9月7日、東京ドームで行われた巨人×横浜DeNAベイスターズ戦――試合は延長12回、オコエ瑠偉(27)のサヨナラホームランで巨人が劇的な勝利を収めた。1点を追っていた9回裏には、同日に一軍昇格した中山礼都(22)が同点適時打を放つなど、見どころも満載の一戦だった。しかし、ネット裏の一角に“異様な集団”が陣取っていた。

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「複数球団のメジャースカウトが視察にやってきたのです」(NPB関係者)

 メジャースカウトのNPB視察は珍しいことではないが、巨人・DeNA両球団の関係者が驚いたのは、メジャーリーグ球団が現地契約した日本人スカウトではなく、米国から来日したと思われる外国人スタッフだったからだ。そのスカウト集団はNPBの先乗りスコアラーが球場入りするのと同じように、関係者入り口で入場手続きをした。彼らの大半が延長12回、4時間41分に及ぶ大熱戦の結末を見届けたという。

スカウトの狙いは岡本だったのか?

 翌8日にはZOZOマリンで千葉ロッテ×楽天戦があり、ロッテの先発は佐々木朗希(22)だ(結果は5回、3失点で8勝目)。「佐々木視察」のために来日したスカウトが「巨人戦も見ておこう」と、東京ドームにもやってきたのではいだろうか――そう考えるNPB関係者もいたが、“観光”で他の球場に足を運ぶほどメジャースカウトは暇ではない。

 ということは、早ければ今オフ、あるいは近年中のMLB挑戦が囁かれている岡本和真(28)がターゲットか……。

「前年WBCで好投した大勢(25)の可能性もあります。今春キャンプにもカージナルス、フィリーズの日本人スカウトが来ていました」(スポーツ紙記者)

 ア・リーグ中部地区のスカウトによれば、19年オフ、山口俊元巨人投手のポスティングシステムによるMLB挑戦が転機になったと言う。

「これまでこの制度を認めて来なかった伝統球団が、方針を変更したのは大きいですよ。ポスティングを認めるに際し、優勝や個人タイトルといった球団への貢献度などの内規はあると思いますが、獲得後の高い注目はもちろん、企業の広告出資も期待できます」

狙いは日本人選手?

 予告なしで現れたメジャースカウトたちは誰を見に来ていたのかだが、実は、「日本人選手ではない可能性も」という指摘もある。

 今年の巨人は投打ともに外国人選手の当たり年となった。低迷する打線を救ったのは途中加入のエリエ・ヘルナンデス(29)であり、そのヘルナンデスの故障離脱後も優勝戦線に生き残ることができたのは、ココ・モンテス(27)のおかげ。また、投手では来日2年目のアルベルト・バルドナード(31)も活躍し、守護神・大勢が離脱した前半戦では代理クローザーも務めたほど。フォスター・グリフィン(29)、カイル・ケラー(31)らも投手陣の重要なピースとなっている。

「近年、NPBでの活躍が認められ、大型契約でメジャーに帰還するケースも増えてきました。彼らがNPBで活躍できた理由の一つとして、コーチの存在があります。メジャーのコーチは“調整”が主体ですが、NPBのコーチは“教える”のが上手。それも、教えすぎるのではなく、ちょっとしたアドバイスや微調整の進言をして、外国人選手の潜在能力を伸ばしています」(米国人ライター)

 また、巨人が変えたのはポスティングシステムに対する方針だけではなかった。原辰徳前監督(66)が編成にも関わっていた去年まで、「外国人選手の選別」で重きを置いていたのは「性格」と「パワー」だった。これは原監督の要望によるものだったが、今季からは「打者は低めの変化球に対応できるかどうか」を慎重に見定めるようになった。ヘルナンデスとモンテスがメジャーリーグ昇格のチャンスを掴めずにいたのは「非力」に見えたからだが、バットコントロールと選球眼が優れていれば、トップステージでも通用することを巨人で証明したのである。

「ヘルナンデスは、3Aパシフィックコーストリーグ所属のラウンドロックでプレーしていました。昨季は137試合に出場し、打率2割9分8厘、本塁打18、打点99と活躍し、6月には26試合連続安打を記録し、シーズン終了時には『チームMVP』にも選ばれました。彼の活躍で出場機会を失い、自らオプトアウトを行使して新天地を探したのが筒香嘉智ですよ。モンテスは来日するまでロッキーズ3Aのアルバカーキで活躍し、パシフィックコーストリーグの首位打者でした。ロッキーズは早々に優勝戦線から脱落しましたが、昇格のチャンスをもらえなかったのは、正二塁手のブレンダン・ロジャーズ(28)、三塁手のライアン・マクマーン(29)、ショートのエゼケル・トーバー(22)といった看板選手とポジションが被っていたからです」(前出・同)

 巨人移籍後のモンテスは「試合に出るため」とし、自ら外野の守備練習にも参加してレギュラーの座を掴んだ。元々は、内野ならどこでも守れる選手だったが、米球界では複数ポジションが守れる選手が重宝されており、MLBスカウトがその評価を上方修正したのかもしれない。

注目選手はDeNAにも

「DeNAのほうを見に来たのかもしれません。J.B.ウェンデルケン(31)は魅力的だと思います。昨季、61試合に投げ、防御率は1点でした。今季は出遅れたものの、防御率1点台をキープしています。タフネスなリリーフ投手は重宝されます」(前出・同)

 タフネスリリーバーという意味では、巨人のバルドナードも高評価されているはずだ。パナマ代表で前回のWBC大会にも出場しているが、それはメジャーリーグに自身を売り込むためでもあった。巨人での居心地の良さも感じているそうだが、メジャー契約をちらつかされたら、どうなるか分からない。

 また、DeNAのタイラー・オースティン(33)は、今季が3年契約の最終年だ。その契約が交わされた21年オフ、「4年目の選択権は球団側にあるようだ」と伝えられたが、真相は不明だ。今季は4番も任され、ヤクルト・村上宗隆、巨人・岡本ともホームラン王のタイトルを争っているだけに昇給は必至。ここに「来季34歳」という年齢と怪我の多さが重なってくる。新しい年俸額を巡って、DeNAが即決できない可能性も高い。

 過去に巨人で覚醒した外国人選手といえば、マイルズ・マイコラス(36=カージナルス)が思い出される。メジャーリーグに復帰した18年にいきなりリーグ最多勝のタイトルを獲得し、元阪神のロベルト・スアレス(33)もパドレスで現在も活躍中だ。巨人の優良外国人選手たちがメジャースカウトの標的にされているとしたら、阿部慎之助監督(45)も気が気ではないだろう。巨人フロントは早々に延長契約を結ぶべきだ。

デイリー新潮編集部