◆年中無休でホラーに浸るため事故物件に住む

――お化け屋敷は夏だけの季節限定というイメージですが、その職業だけで生活していけるかんじですか?

Coco:はい。収入的には、おおむねお化け屋敷の企画制作でまかなえています。ただ、どうしても閑散期はあって、そのときは怪談や心霊スポットに関する本を書いたりしています。そうした仕事以外でも、24時間年中無休でホラーに浸っていたくて、事故物件に住み始めて、今4軒目です。

 一人暮らしで、ペットの猫がいますが、ほかにお化け屋敷で使ったお化けが7体ぐらいいて、玄関開けたらそこにお化けがいます。でも、事故物件でも、なかなか本物のお化けにはめぐりあえないですね……。

 2軒前の事故物件での話をしましょう。ある日、流し台に水をためた鍋を置いていました。見ると、なぜか水が揺れているのです。事故物件だから、「もしかして霊現象?」と思いがちになりますが、冷静に考えました。それで気づいたのですが、流し台の裏に洗濯機があって、そのとき脱水で回っていたのです。その振動が、鍋の水に伝わっていたのだと分かりました。先入観にとらわれるあやうさを実感しました。

 今の物件では、24時間定点のペットカメラを、玄関とリビングに設置しています。外にいても、カメラのセンサーが何か動いたものをとらえると、自動で録画して送信してくれるのですね。それでも今のところは心霊現象と呼ぶような事件は起きていないです。

◆長い髪の女が壁に吸い込まれて…

――事故物件に住み始める前に、室内で心霊体験をしたことはありますか?

Coco:私の実家で1度ありました。9歳頃のときです。私は生まれも育ちも京都で、実家は中古物件でした。なぜか、寝たきりの人用のベッドが私の部屋にありました。その日は、夜中に1人で起きて深夜アニメを観ていました。番組が終わってテレビを消し、リビングの電気だけはつけておいて、お風呂に入りました。

 お風呂からあがって、「またテレビ見ようかな」と向かった途中で、目の端の壁から、白い服を着た長い黒髪の女の人が、すーっと私の前を滑るように横切って、もう一方の壁に吸い込まれていきました。そこは、私の部屋があるところです。

「これはもうダメ。自分の部屋には戻れない」と、親の寝ている部屋に潜り込んで一夜を明かしました。実家の心霊現象はそれっきり、他の家族も体験はしていません。あれは結局なんだったのかなと思います。今の自分だと、見ても平気だと思いますね。

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 子供時代から一転、幽霊はむしろ見たいと明るく語るCocoさんだが、事故物件に住むだけでなく、全国の心霊スポットも探訪しているという。後編では、心霊スポットでの体験について語っていただいく。

<取材・文/鈴木拓也>

【Coco(ココ)】
京都市出身のホラークリエイター(お化け屋敷プロデューサー)。SNSの総フォロワー数は50万人超の「ホラー界のインフルエンサー」として活躍。最近は怪談作家としても活動の幅を広げ、著書(共著含む)に『京都怪談 猿の聲』『怪談怨霊館』『投稿 瞬殺怪談 怨速』『おかるとらべる 365日ホラー旅』(いずれも竹書房)がある。
公式サイト:「怪談専門のお店 京都怪談商店」
YouTube:「オカトラTV」
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Instagram:@coco_horror

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki