【連載】有村智恵のCHIE TALK(第5回・後編)

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 JLPGAツアー通算14勝をあげ、米国ツアーに挑戦した経験もあるプロゴルファーの有村智恵の連載・第5回。2022年オフに、妊活に専念するためツアーの一時休養を発表し、現在は双子の男児の母として奮闘しながら、30歳以上(45歳未満)の女性プロゴルファーのためのツアー外競技「LADY GO CUP」を主宰するなど精力的な活動も続けている。

後編では、女子プロゴルファーの魅力を発信する「LADY GO」プロジェクトの一環として、さまざまな女子選手にプレー機会を提供する「LADY GO CUP」の生い立ちから、「LADY GO CUP」を通して女子プロゴルファーやゴルフ界にどう貢献していきたいのかまで、有村プロにとっての「もうひとつの軸足」について話を聞いた。

>>前編【「来年、熊本の試合には――」ツアー休養中の有村智恵が競技復帰を語る】を読む


「LADY GO CUP」開催時の様子(写真は本人提供)

――ツアー休養中も、ご自身が立ち上げられた「LADY GO」の活動は精力的に続けられていますね。立ち上げたきっかけを教えてください。

 もともと「LADY GO」を立ち上げる前は、まだまだJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)がSNSを通した発信に力を入れてない時期でした。「もっとSNSで女子ゴルフの情報を発信してください」と私たちもJLPGAにリクエストしていたのですが、当時は、いろいろなルールや規定上発信できないことも多い、ということでしたので、それならば、個人や有志で、「女子プロゴルファーのいろんな魅力を発信できればいいな」と考え、立ち上げたのが「LADY GO」です。

 根っことして、女子プロゴルファーの魅力を伝えたい、という思いは変わらないのですが、いろいろと流れが変わってきて、今では、JLPGAのSNSもすごく充実してきていて、ツアーに出場している選手たちの魅力はどんどん発信してもらえるようになりました。ですが、JLPGAの会員はたくさんいますし、(会員でも)JLPGAツアーに出場できていない女子プロゴルファーもたくさんいます。じゃあ、協会がカバーできないところをこちら側が発信していこう、と。

――「LADY GO」の活動のひとつである、「LADY GO CUP」も年齢制限のある新しい試みですよね。

 30歳から45歳までの女子プロが出場できる試合を立ち上げたのは、自分自身が30代に入って、ツアー生活と、たとえば子どもを授かるとか、ゴルフ以外の生活の両立がすごく難しいなって思うようになったのもきっかけのひとつです。

 ツアーに出場していると、本当に家にいれられないので、「子育ては無理だな」とか、「子どもを授かることすらちょっと難しいな」って考えるようになってきた時に、0か100、つまりツアーに出て試合に出るのか、それ以外の人生を取るのか、どちらかを決めなきゃいけないのはなかなか難しい決断でした。「どっちも取れる状況を作れないかな」「1日だけの試合があればいいな」と考えて始めたのが「LADY GO CUP」なんです。

――実際に出場されている選手や、周りの選手からの反応はいかがですか?

 ペアマッチという、普段のレギュラーツアーとはちょっと違った大会形式なので、試合に出てくれている選手たちからは、「いつもと違ってすごく楽しいし、この大会でいい気づきがあったり、いろいろな挑戦ができていい感触を得られた」っていう声ももらっています。

 お子さんを育てながらでは、QT(※クォリファイングトーナメント。レギュラーツアーやステップ・アップ・ツアー出場権をかけた試合)に出ることすら難しい、という選手も多かったので、そういう方々が「10年ぶりぐらいに試合に出られたよ」って言ってくださったり、子どもを試合会場に連れてきてくれて、子どもの前で試合をする姿を見せることができて、「こんな機会はなかなかない」って言ってくださることも多くて。そういう声を聞くと、「また頑張ろう」っていう気持ちにはなりますね。

【ゴルフにはいろんな楽しみ方があることを知ってもらいたい】

――「LADY GO CUP」を、今後どのような形に発展させていきたいか、また、どのようにゴルフ界に貢献していきたいかなど、お考えをお聞かせいただけますか。

「ゴルフのいろいろな形を見せていきたいな」と考えています。JLPGA主催のレギュラーツアーやステップ・アップ・ツアー、レジェンズツアーという、純粋なストロークプレーの個人の戦いは、すでにベースとしてあります。でも、ゴルフっていろいろな楽しみ方がありますよね。

 7月に開催した「KURE LADY GO CUP 2024」は、ストロークではなく、ポイント制だったんです。ボギーを打っても関係ない(ポイントは減らない)から、選手には"とにかく攻めてほしい"、見ている皆さんには"攻めるゴルフの楽しさを知ってもらいたい"という思いがありました。

 この試合は、9ホールで争う形式だったのですが、9ホールにしたのも、天候も不安定な時代になってきているので、屋外で実施するスポーツの今後がわからないなか、18ホールやらないと成立しない試合は、競技としてはもう持たないかもしれないな、と思う部分もあって。だから、(協賛してくださる)企業の方にもそうですし、応援してくださるファンの方々にも、「こういう形だったら、長く応援できるかも」って思ってもらえる、新しい形を見つけられたらいいですよね。

 今回のポイント制も新しい試みですが、女子プロゴルファーだけでの試合ではなく、たとえばジュニアと女子プロゴルファーが一緒に回るのも面白そうですし、今はいろいろな競技のアスリートがゴルフやってくださっているので、ゴルフが好きな女子アスリートと女子プロのペア、とかも面白そうだな、と思っています。

 根っこは、私が面白そうと思ったことをやっているのですが、"ゴルフっていろんな楽しみがあるよ"っていうのを、この大会を通して皆さんに知ってもらいたいんです。

――出場している女子プロゴルファーには、どのように還元していきたいとお考えですか?

「LADY GO CUP」は、今はほとんどの試合をBSJapanextさんに中継していただいて、メディアの露出にはこだわっています。女子プロゴルファーの活動の場は広がっていて、「LADY GO CUP」に出場している選手のなかにも、解説で活躍されている方もいれば、会社を経営されている方、普段はレッスンプロとして活動されている方、もちろん現役ツアープロとして活躍をされている方もいらっしゃって、いろいろな選手の今の活躍を知ってもらいたいっていうのも「LADY GO」の思いのひとつです。

「LADY GO CUP」という試合を、自分をアピールする場にしてもらいたいので、試合の中継のなかで、「この人に教わるには、ここに行ってくださいね」みたいなアピールもできたら面白いですし、たとえばYouTubeチャンネルを持っている方には「ぜひ現地でYouTubeの撮影をしてください」とお伝えもしています。

 試合で結果を残すだけじゃなく、自分のやりたいことを、とことん皆さんに実現してもらえる場所にしたいので、見ている方々にも、"この選手を応援したいな"っていう女子プロを見つけていただけたらうれしいですね。

「有村智恵のCHIE TALK」 次回は9月10日(火)に更新予定

【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12〜14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。

◆インタビュー完全版を動画で見る
https://youtu.be/-cM5eK3jajE