人類の祖先はヤリを投げるのではなく地面に突き刺して突進する動物を待ち伏せして倒していたのかもしれないという研究結果
人類の祖先は、しばしば毛むくじゃらでヤリを持った姿で描かれることがあります。この「ヤリ」は獲物に対して投げつけて使っていたのだろうと一般的に考えられていますが、少し違う方法で使用していた可能性が指摘されました。
Clovis points and foreshafts under braced weapon compression: Modeling Pleistocene megafauna encounters with a lithic pike | PLOS ONE
To kill mammoths in the Ice Age, people used planted pikes, not throwing spears, researchers say
https://phys.org/news/2024-08-mammoths-ice-age-people-pikes.html
カリフォルニア大学バークレー校の考古学者によると、今から1万3000年前、人類の祖先は突進してくる動物に突き刺さるような角度でヤリを地面に固定していたのではないかと考えられるとのこと。このように使えば、人間の手でヤリを投げるよりもはるかに強力な一撃を相手に与えることが可能で、獲物を効率的に仕留めることができます。
また、投げて使う場合は獲物を仕留めやすい場所に誘導しなければなりませんが、そのように都合のいい場所ばかりあるわけではありません。一方で、ヤリを突き刺す場合は地形の制約がなくなることも利点の一つです。
北米大陸周辺では、ヤリの先端に使われていたと考えられる道具「クローヴィス・ポイント」が各地で発見されています。クローヴィス・ポイントは先端がギザギザになっていることが特徴で、大きさは親指大のものからスマートフォン程度の大きさまでさまざま。中央にはくぼみがあり、この部分にヤリの軸となる木材等を取り付けて使っていたのだろうと考えられていますが、残念ながら軸の部分は未発見です。アメリカ全土で数千個が発掘されているほか、マンモスの骨格から出土したものもあります。
カリフォルニア大学バークレー校のスコット・バイラム氏らは、このクローヴィス・ポイントがどのように肉を切り裂くのかを確かめるため、重りを使った実験を行いました。その結果、クローヴィス・ポイントは獲物に突き刺さった後に軸から外れ、獲物の体内を傷つけるような動きをする可能性があることがわかりました。
論文共著者のジュン・ウエノ・スンセリ氏は「ヤリを投げて使うという描写は、物語としては面白いものですが、氷河期の生活の現実を考慮していない可能性が高いと考えられます。人間の腕で発生させることのできるエネルギーは、突進する動物が発生させるエネルギーとは比べものになりません。これらの槍は、使用者を守るために設計されたものなのです」と語りました。
今後数カ月のうちに、バイラム氏らはマンモスのレプリカのようなものを作って理論を検証する予定です。